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20代前半で、高校生役を熱演

 土屋は『まれ』が放送された2015年、同作でも共演した山﨑賢人とともに映画『orange―オレンジ―』で主演を務め、翌年、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。『orange』や前出の『兄に愛されすぎて困ってます』にしてもそうだが、20代前半には少女マンガを原作とした映画で高校生役を演じることも多かった。一方で、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017年)のように、困難に直面しながらも懸命に克服しようとする役も目立つ。

 昨年も『やんごとなき一族』、年末に全世界で配信が開始された『今際の国のアリス2』と話題のドラマにあいついで出演した。後者は2020年にNetflixで配信されるや世界70ヵ国以上でTOP10入りした人気ドラマのシーズン2で、得意のアクションにますます磨きをかけた。結婚発表直後の先月7日には、主演ドラマ『優しい音楽~ティアーズ・イン・ヘヴン 天国のきみへ』も放送されている。

『やんごとなき一族』(2022年、番組公式サイトより)

 数ある近年の出演作のなかでも、一昨年の2021年公開の映画『哀愁しんでれら』は土屋がそれまでに経験したことのない役柄を演じ、彼女にとってひとつの画期となった作品といえる。公開時のインタビューでは、出演依頼を3度断ったと明かしている。

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出演を躊躇した理由とは…

 同作で土屋が演じた主人公は、もともと児童相談所に勤務し、子供を虐待する母親に対しては憤りを隠せなかった。その彼女がある日、次々と不運に見舞われた末、田中圭演じる開業医と劇的に出会う。彼が前妻とのあいだに儲けた小学生の娘にも気に入られ、まもなくして結婚……と、ここまではタイトルどおり絵に描いたようなシンデレラストーリーだが、家庭に入ってからの彼女は、理想的な妻、母親であるべく努める一方で、娘に疑念を抱くようなできごとがあいつぎ、ついには精神的に追い詰められてしまう。

映画『哀愁しんでれら』(2021年)

 基本的に仕事は断らないスタンスだという土屋が、同作にかぎっては出演を躊躇したのは何より、ラストで主人公が夫とともに引き起こす事件がどうしても受け入れられなかったからだ。だが、制作陣から「自分自身を見失うような役に身を投じる土屋さんがどうしても見たい」と粘られ、最初のオファーから半年を経てついに引き受けた(『週刊朝日』2021年2月5日号)。夫役が以前から共演が多く、信頼する田中圭だったことも出演する決め手となったようだ。

 劇中では、土屋も田中も子供のときに母親とのあいだでトラウマとなるような経験をしていた。現実の土屋の母親は、彼女と喧嘩もするし意見が違うこともあるけれど、けっして強制はしないし、相手の思いを汲んで感情的にならずに話ができる存在だという(「with online」2023年1月23日配信)。