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芸能界入りした後も「門限厳守」

 インタビューでも母親に関するエピソードがたびたび語られる。芸能界に入ってからも彼女は実家暮らしが長く、門限も厳しかったので、あるとき自分だけなぜ早く帰らないといけないのかと母に問いただしたことがあった。すると母はある1冊の絵本を彼女に読ませてくれたという。

『まんげつのよるまでまちなさい』というその絵本では、「夜を見たい」と外に遊びに行きたがる主人公の小さなアライグマに、そのお母さんが満月になるまで待ちなさいとずっと言い続ける。そして最後のページでは、満月の日が来て、ついにお母さんの許しが出るのだが、そのときにはアライグマの子も立派なお兄ちゃんに成長していたというストーリーであった。読後、土屋は母から「門限があるのは、太鳳をいい子にしたいからじゃないの。幸せな大人になってほしいからだよ」と言われ、それからというもの素直に家に帰るようになったという(『an・an』2015年4月1日号)。頭ごなしに言うことを聞かせるのではなく、絵本を通じてきちんと説明してくれたおかげで、彼女も親の気持ちを理解できたのだろう。

(左から)土屋太鳳、クリストフ・ルメール騎手。2019年、競馬・皐月賞の表彰式にて ©文藝春秋

意地で卒業を果たした体育大学

 土屋は芸能活動を始めてから体育大学に入学し、8年をかけて一昨年に卒業した。専攻は高校から始めたダンスだったが、理論を学ぶか、実践で学ぶかですごく悩んだという。ここでも母の教えが活かされた。音楽大でピアノを学んだ母が、大学の4年間でやった曲はいまでも弾けると話してくれたのを思い出し、大学で学んだことがこれから先も残るのなら、実技のほうでいこうと決めたという(『週刊文春』2018年8月2日号)。この選択ゆえ、おそらく多忙のなか学校に行かねばならないことも多かっただろう。それを時間はかかってもちゃんと卒業したことに、彼女の意地を感じる。

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 一昨年のインタビューでは、《将来的には社会に対して何をしていくかが大事なんじゃないかと思っているんです》と語っていた(『GALAC』2021年3月号)。そこには、2020年から翌年初めにかけてミュージカル『ローマの休日』に出演したのを機に、原作となる往年の映画で主演したオードリー・ヘップバーンについての本を読み、彼女がチャリティをたくさん行っていたと知ったことも影響しているという。もともと土屋は子供のときから他人の役に立ちたいと思っており、いまでも誰かが困っているときに渡せるよう、カイロや絆創膏を常に持ち歩いているのだとか。

 同じ年の別のインタビューではまた、《誰にとっても、守れる存在がいることって素敵ですよね。人のために頑張ることのほうが、長続きする気がします》と話していた(『週刊朝日』2021年2月5日号)。妊娠発表前の発言ながら、この言葉からは、守れる存在を授かった彼女が、産休から復帰後、息の長い俳優となりそうな予感を抱かせる。