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必ず成功する広告のルールとは?

 その後、「プール冷えてます」がなぜこんなにもヒットしたのか理由を細かく分析したことによって、広告コミュニケーションの本質がはっきり見えました。目立つこと、新しいこと、簡単なこと、シズルがあること、幸福なこと、企業カラーがあること、商品が動くこと。そんな自分にとっての広告のルールが確立したんです。これを全てクリアすれば必ず成功する。このルールはそれ以降現在に至るまで、僕が目指す広告コミュニケーションのひな型になったんです。広告以外にも、商品企画や建築なども手がけるようになりましたが、どんな案件だろうが、根本的には全部「プール冷えてます」と同じなんですよ。

hungry?/CUP NOODLE〈1992-1996〉
暑中御見舞い申し上げます/としまえん〈1990〉左 サンタフェの扉/としまえん〈1992〉右
ブタとシロクマ/7つのプール〈1987〉
ROLLING-K/ROLLING-K〈1989〉
ペプシマンブルー/ペプシコーラ〈1998〉

川下 作家性のお話もすごくよくわかります。いわゆる作家性を前面に押し出した「作品」としての広告を作っているクリエイターっていっぱいいたじゃないですか。それに対して大貫さんは自分自身を表現するのではなく、広告を主人公にしていると感じます。とはいえ僕は個々の広告が全然違って見えて、大貫さんが作った広告はやっぱりわかります。

大貫 自分にとっての正しい広告の形があるので、そのフォームが出ているんだと思います。見た瞬間に企業や商品の独自のビジョンが明快に伝わる広告表現を作ることが、自分の最重要視していることなんです。どのコミュニケーションもこのポイントを確実にクリアーさせているから、作ったのが僕だとわかるんじゃないですかね。近頃はこういうことを「ブランディング」なんていう言葉で表現していますが、そんなに簡単にインスタントにできることではありません。

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川下 確かに。大貫さんの広告はそこの気持ちよさがありますよね。どの仕事もクライアントの個性が明確に表現されています。

 大貫さんが手掛けた豊島園の広告って、それまでの広告のようにきれいなものではなく、ツッコミどころ満載の広告じゃないですか。それって今まさにネットで広がる、今風の言葉で言うとバズる重要な要素の1つなんですよね。

 その意味では、ネットのない時代に、それ以上の破壊力を持つ広告を作っていたんだなと思ったんですよね。それは常に本質を突いていたからこそ成しえたことだと思うんです。今のネットの時代にこういうことをやってみたら面白いだろうなと思っていることはありますか?

大貫 ネットだからどうこうというのは興味がないですね。メディアは変わってもコミュニケーション自体は何も変わらないと思っているので。重要なのは根幹のアイデアとコンテンツだけ。自分でweb広告をやっても突破することは難しいとは思っていません。

『Advertising is  Takuya Onuki Advertising Works 1980-2010』(大貫卓也・著 グラフィック社 10000円+税)

構成・山下久猛(フリーライター)