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シャンプー台では首に力を入れてはいけない…力を入れると起きる“事故”とは

2023/02/05
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 また、バックシャンプーは洗われるお客様側にとっても首・腰への負担がかかりにくくなります。そのため、従来型のサイドシャンプーの台数は徐々に少なくなっています。

シャンプーの大敵は、水が飛沫を上げること

 美容師は日々、当たり前のようにシャンプーをしていますが、シャンプーには高度な技術が要ります。特に難しいのは、仰向けに寝るお客様の顔に水がかからないようにすることです。仰向けは耳にも水が入り込みやすいため、事故に繋がりやすい姿勢です。

 美容師はシャンプーをする際、片手でシャワーヘッドを持ちながら、もう片方の手で頭皮を掻きます。この時、丸い頭に対してシャワーの当たる角度が悪いと、飛沫(しぶき)を上げて跳ねます。そのため、シャワーを移動させる度にシャワーを当てる角度も変える必要があるのです。

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▼お客様の首を持ち上げるタイミングは、後頭部を洗う時

 お客様の首を持ち上げるタイミングは、後頭部を洗う時です。右手にシャワーヘッドを持ち、左手で首を必要な高さに持ち上げます。この時、後頭部を洗うためのシャワーは上を向いています。シャワーヘッドを持った手は、首筋に密着させつつ、擦りながらシャワーを当てている形です。

 ここで重要なのは、シャワーの手の密着度です。シャワーヘッドが後頭部から離れるほど飛沫を上げやすくなるため、常にシャワーの手は後頭部に密着させて持つ必要があります。そのため、「頭の重さ」を利用して下方向の圧をかけ、ちょうどいい角度に首を持ち上げつつ、シャワーの手を密着させています。

首に力を入れなければ、理想的な状態に

▼この時に、お客様が首に力を入れるとどうなる?

 シャワーの手を密着させないと、上向きのシャワーは噴水のように飛沫を上げます。そして密着が甘い場合、水が首をつたって背中がびしょ濡れになります。これらは、美容室としては絶対に避けたい事故です。

 ですが、このタイミングでお客様が首に力を入れるとどうなるのか? 噴水や背中に漏れる事故を誘発してしまうのです。

 美容師が頭を持ち上げているときにお客様が首に力を入れると、必要以上に首の角度が上がります。すると「頭の重さ」の圧がかからないため、シャワーの手の密着が緩くなってしまい、シャワーの水は上にも下にも逃げやすくなります。