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 各政党のざっくりしたイメージはこんな感じ。

SPD:社会民主党:中道左派の古参メジャー政党(現与党)
CDU:キリスト教民主同盟:中道右派の古参メジャー政党(CSUはバイエルンの分派政党でより保守色が強いが、全国的にはCDUと一体視される)
Grüne:緑の党:環境保護、再生エネルギー重視の意識高い系のやや左派政党(現与党)
FDP:自由民主党:経済超重視の中道政党(現与党)
AfD:ドイツのための選択肢:反EU・反移民・反グローバリズムを掲げる新手の右派政党
Linke:左翼党:SPDや緑の党で吸収できない系の左派を糾合した的な政党

 まず突出して目につくのがAfDの「供与賛成6%」と、緑の党の「供与賛成75%」ですね。

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右の6つのグラフが支持政党別の戦車供与への賛成率。緑の党(Grune)の75%とドイツのための選択肢(AfD)の6%が目を引く ZDFより引用

 AfDは右派なので防衛政策との親和性は高くなりがちなのですが、「NATOとかEUとかああいう国際協同システム大嫌い! ドイツだけで頑張る!」的な政党でもあり、支持者が供与に強硬に反対するのはわかりやすい。

 ただ中道左派で「意識高い系」な緑の党の支持者がどこよりも戦車供与に大賛成なのは、日本社会の皮膚感覚ではかなり意外に感じられるだろうと思います。世界各国の環境政党が集まるグローバルグリーンズの中心的存在として、平和主義・フェミニズム・草の根民主主義を唱道してきた「あの」緑の党が一体なぜ戦車? という感じで。

緑の党のリカルダ・ラング共同党首(29) ©時事通信社

「現実的な左派政党」が評価されるようになったきっかけ

 実はここには、冷戦構造が崩壊した後にドイツの(主に左派)政党が直面した「政策ポリシーを時代にあわせていかにアップデートするか」という葛藤が濃厚に反映されているのです。

 ドイツ緑の党が徐々にメジャー化した1990年代までは、教条的な反戦主義を中心にインテリ的進歩理念と抱き合わせにした「いかにも」な左派系政党でした。

 しかし90年代末、バルカン半島でコソボ紛争が勃発したことで大きく変化します。当時、連立政権で外相を務めていた緑の党の大物ヨシュカ・フィッシャーが、NATO軍によるコソボ空爆を支持。ドイツ連邦軍が戦後初めて国外に派兵されるきっかけをつくったのです。

 この行動は緑の党の内外で大きな論争を呼び、分裂も招きました。しかし最終的には「地に足のついた現実主義である」という見地から評価されるようになっていきました。そのあたりの政治・政策論議の内容と世論の展開は非常に興味深いもので、なぜかあまり日本に伝わっていないのが残念です。