歌舞伎町・新宿東宝ビル横の広場などに集う少年少女たち、通称“トー横キッズ”。コロナ禍以降、家庭や学校に居場所のない子たちが集まる場所でありつつも、暴力事件や売春などさまざまな犯罪が多発していることで問題視されている側面もあった。(取材・文=田中慧/清談社)
「どうやって稼いだの?」援交で稼いだお金を見られて冷や汗
昨年12月10日深夜11時、警視庁は私服警察官ら約100人を動員し、未成年のトー横キッズたち20人の一斉補導を行った。当日のことを、実際に補導された亜里さん(仮名・15歳)はこう話す。
「いつもどおり深夜まで広場で20~30人で集まってたら、いきなり肩を叩かれて『ちょっといい?』って。以前から面識がある警官で、その人は私が未成年だと知ってるけどこれまでは夜11時過ぎに声をかけられたことはなかったから、『これはきっと補導だな』と悟りました。
思えば、当日は夜10時くらいから、スーツなのに運動靴で、両手が空くようなショルダーバッグっていう、私服警官スタイルの人が多いなとは感じてたんです」
広場にいた未成年のなかで一番最初に付近の新宿交番に連れて行かれたという亜里さん。交番では簡単な持ち物検査をされたという。
「たまたま持ってたタバコを没収されたり、財布に入っていた3万円を見られて『これはどうやって稼いだの?』と聞かれて冷や汗をかきました。界隈では『案件』と呼ばれる、援交で稼いだ金だったんですが、バレたらヤバイと思って『年を偽ってコンカフェの体入(体験入店)に行ってきた報酬で……』とごまかしました」
その後は、タクシーで新宿警察署に送られ、名前や年齢、住所や学校名を聞かれたほか、顔写真を撮影されたという。
我が子が補導されても、さほどショックを受けない親
「ここで通常なら親に連絡が入って、迎えに来てくれる親がいる子はそのまま自宅に、親が引取りを拒否したら児童相談所送りになるんです。どちらの場合でも、補導された子の半分以上は、そのあとも広場に戻ってきますけど。
私の親は都外住みなので、当日は終電が間に合わずそのまま児相待機に。翌11日も休日で児相が引き取りの対応ができないといわれ、次の月曜日に親に引き取られました」
「我が子が補導された」と聞けば、「何があったんだ」と心配になる親が大半かもしれない。だが、亜里さんやその親の場合は、今回の補導でさほど大きなショックを受けたわけではなかったという。