横山裕はジャニーズ事務所の「関ジャニ∞」というアイドルグループの一員で、「あさイチ」では生田斗真が「バラエティー番組でおもしろおかしいことをやっているイメージが強いかと思いますが昔からすばらしい俳優でミステリアスな雰囲気をもっている」と語り、博多大吉も「大学生からはじまって実年齢から考えるとすごいなと」とその演技力を賞賛した。
そう、横山裕は41歳にもかかわらず、大学生役をやってもさほど違和感がなかったのだ。逆に41歳というのが驚くほど瑞々しいのである。長いまつげに覆われた憂いを帯びた瞳、ぷっくりして血色のいい唇、きめの細かい肌をもち、黙って佇んでいたら美少年という風情だが、生田も語るとおりバラエティー番組でおもしろおかしいことをやっている。
ちょっと仏頂面でおもしろいことをやる。いじられキャラ的な印象もあって、グループの冠番組「関ジャニ∞クロニクルF」(フジテレビ、2015年~2022年)では、うんうんうんと相槌の回数がやたらと多いことをいじられ、相槌場面を編集した映像がじつに傑作であった。たぶん、適度にいじられることで美少年感が崩れ、親しみがわくのだろう。それは逆に、汚れ役をやっても行きすぎない利点にもなる。
今回の悠人は、第19週まで、この人物は白か黒か熱いのか冷めてるのか乾いているのか情があるのかどっちかわからないところがちょうど良かったのである。お金第一の人間味のない人物のようで真面目に金融業をやっていて、仏頂面で親に反発していても、ほんとうは家族のことを思っている、素直になれない、その感情をベタつき過ぎない、ほどよい湿度に仕上げた。放つ光を調節する俳優はいるが、横山裕は湿度調整可能な除加湿機能をもった俳優である。
気になるのは久留美との関係…
お好み焼きやカレーなど庶民的な食べ物が好きで、謎の金色のビリケンさんのパチもんみたいなオブジェを購入する謎センス、実家の近くまで帰っても立ち寄らず隣のお好み焼き屋にだけ行き、たまに家に帰っても父親とはすぐに喧嘩になって、すぐに家を出ていく羽目になる、親子あるあるのなかの悠人の微妙な心理を、類型的ではなく、あくまでもさらりと、ごくごく身近な人物のように演じる。悪さする兄、困った兄、というような役割に陥ることなく、ちゃんとこの人物なりの思いをもって生きているのだということが伝わってきた。「舞いあがれ!」は父親にしても兄にしても、類型的にしないように気遣っているように見える。
最大の見せ場となったインサイダー取引問題は大きな悲劇にはならず、家族の絆を強くしたようで、こうなると今後の悠人の役割はどうなるだろう。舞の幼馴染の久留美(山下美月)との関係が気にかかるところだ。このまま家族経営に取り込まれてしまうとベタベタの人情ものの大団円でおもしろくないような気もするので、そこもいい湿度でお願いしたい。