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「世界を牛耳る悪の秘密結社」を祭り上げたのは誰? 230年以上も語り継がれた“イルミナティ陰謀論”の真相は…

『謎解き「都市伝説」』より#2

2023/02/28
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イルミナティに光明を授けたのは堕天使ルシファー?

 今も実在しているメイソンに対して、あっという間に消えてしまったはずのイルミナティが、未だに陰の陰謀結社として語り継がれる理由として、「イルミナティ」というこの名称の響きがどことなく格好いい、ということがあるのではと個人的には思っている。

 イルミナティとは、英語のイルミネーションといった言葉遣いからもわかるように、「光明を授けられた者」といった意味がある。では、イルミナティにその光明を授けたのは一体誰だったのか? それは「光明をもたらす者」という名を持つ、堕天使とか魔王などとも言われているルシファー(※5)だとされている。アンチキリストの代表格の魔王から光明を授けられた以上、イルミナティも悪魔の団体に間違いないというわけだ。

ルシファー

 オカルトに興味のある人ならば、この「堕天使ルシファー」という名を、一度ならず聞いたことがあるに違いない。元々は天使長の地位にあったルシファーだが、神の命令に背いたため天国を追放され魔王サタンと化した、などとよく説明されている。

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 だが聖書には、ルシファーが堕天使である、などとは一言も書かれていない。ルシファーとは「明けの明星」という意味で金星を表す言葉だ。それがどういうわけか堕天使になっちゃったのは、誤訳というか勘違いによるものだった。

 イザヤ書の14章12節に「ああ、お前は天から落ちた明けの明星、曙の子よ。お前は地に投げ落とされた、もろもろの国を倒した者よ」などと、天から落ちた者を連想させる、いかにも思わせぶりな一節があるので、この「お前」とは堕天使ルシファーを指しているに違いないと勝手に解釈されてしまったのだ。

 だが、この文章に出てくる「お前」というのは、堕天使などではなく、この節の前の文章に出てくるバビロニア王ネブカドネツァルなどのことを指している。堕天使ルシファーなどというものは、聖書の読み違いによって生み出された勘違いだった可能性が高いのである。

◆◆◆

※1 アダム・ヴァイスハウプト(1748~1830) ドイツの哲学者。インゴルシュタット大学の教授を務めていた1776年にイルミナティとなる友愛結社を創設。1784年にイルミナティが政府により禁止されると、大学での職を失い、ザクセン= ゴータ公国に亡命した。

※2 ザクセン=ゴータ=アルテンブルク公国 1600年から1826年まで存在した公国。現在のドイツ中部、テューリンゲン州の一部に当たる。

※3 オーギュスタン・バリュエル(1741~1820) イエズス会司祭、陰謀論者。フランス革命が始まるとイギリスに避難。反革命的な立場からフリーメイソンとイルミナティがフランス革命に関わっているとする『ジャコバン派の歴史を説明する回想録』(1797年)を出版。イルミナティ陰謀論の形成に大きな影響を与えた。

※4 ジョン・ロビソン(1739~1805) イギリスの物理学者、数学者。サイレンを発明し、ジェイムス・ワットと初期の蒸気自動車を発明するなどの功績がある優れた学者だったが、オーギュスタン・バリュエルの著書などの影響を受け、晩年の1797年に『確かな権威筋によって集められた~』を出版。イルミナティ・フリーメイソン陰謀論を広めた。

※5 ルシファー キリスト教における堕天使の長・サタンの別名。天界でもっとも美しい大天使だったが、神に反乱を起こして、堕天使になったとされる。

謎解き「都市伝説」

ASIOS ,廣田 龍平

彩図社

2022年11月29日 発売

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