「客の評判は最悪だった」
「髪を染め、ホストのような風貌で、無断欠勤が多く、営業も粗雑。仕事をすっぽかすなど、当たり前のことができないため客の評判は最悪。その割に自己評価は高かった」(杉山の元同僚)
そんな杉山が就職できたのには理由があった。
「実は、彼の父親は三菱電機で一昨年まで社長を務めていた杉山武史氏なのです。息子の就職活動時は常務で、関連会社に息子を入れようとしたが軒並み断られ、ウチが引き取ったと聞いています。周囲も気を遣い、強く注意することができなかった」(同前)
三菱電機といえば、売上高4兆5000億円、従業員は連結で15万人近い日本屈指の大手電機メーカーだが、武史氏の評判について経済部記者が語る。
「自分で『モーレツ社会人だった』と語るほど仕事一筋。15年には三菱電機にとって過去最大の885億円に及んだイタリアの空調メーカー・デルクリマの買収を成功させ、18年に社長に就任しています」
コネ入社については、
「トップが息子をどこかに入れたいと思ったら、自分のところの関連会社に頼むなんて話は、いくらでもあるじゃないですか」(同前)
その父も、社長就任から3年後の21年、思わぬ事態に直面する。
「約35年にわたる検査不正が発覚。結果、引責辞任を余儀なくされた。後任に専務だった漆間啓氏を据え、本人は特別顧問に就任。経営に直接はタッチしないとはいえ、顧問の報酬も支払われる形で、見せかけの引責辞任だと批判されました」(前出・経済部記者)
さて溺愛された息子の今後はどうなるのか。元検事の郷原信郎弁護士が語る。
「被害者が抗拒不能な監禁中の暴行によって大金を脅し取った極めて悪質な犯行です。実刑は免れず、懲役3〜4年ではないか」
顧問を務める三菱電機を通じて武史氏に取材を申し込んだが回答なし。同社広報は、「当社としては関知せず、お答えできることはありません」。
だが、三菱電機と杉山玲央容疑者との関係は、「就職」だけではなかった。杉山容疑者は退職して起業すると、三菱電機グループと取引を始めるのだ。
杉山前社長と息子、そして三菱電機はいかなる関係にあったのか。2月13日(月)12時配信の「週刊文春 電子版」のオリジナル記事で詳報する。