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 訃報に接してタレント・アーティストの野沢直子さんが「この人のことを嫌いだという人は絶対にいない」とコメントされたように、実際に何回かご本人を取材させて頂いた筆者の目にも笑瓶さんはそう映った。

笑瓶さんの忘れられないピースサイン

 笑瓶さんの出演しているテレビ番組を取材したときのこと。

 入社したばかりの新人女子記者の教育を兼ね、二人で現場に行った。収録の休憩時間に新人女子が「よしこちゃんよ~~、やってもらえません?」と言うと、笑瓶さんが生「よ~~しこちゃんよ~~!」をやってくださった。

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©文藝春秋

 そこまではよかったのだが、手を叩いて喜んだその新人、すっかり味をしめ、2度3度とリクエスト。笑瓶さんも嫌な顔ひとつせず「よしこちゃんよ~~!」を繰り返してくれたのだが、どうも新人のリクエストは終わる気配がない。

 3、4回後に止めにかかったが、それを無視して新人女子が「よっちゃん!」と叫び、笑瓶さんが「よしこちゃんよ~~!」と。さしもの笑瓶さんも

「ええ加減にせい! これから本番なんだから。この娘の先輩か同僚だったらちゃんと教育を……」と、言い出し、私は青ざめた。だがふと見ると目と口元が笑っている。

 そこでイチかバチか私が「よっちゃん!」と叫ぶと笑瓶さん、「よしこちゃんよ~~!」とひと言。まるでコントのように3人で大笑いしているとADさんが呼びに来て、笑瓶さんはスタジオに向かった。ところが途中で振り向いた笑瓶さん、なんとこちらにピースを……! その日は二人で一日中「笑瓶さん、最高!」と讃え合った。こんな方、嫌いになれるはずもない。

 自宅で倒れ、愛するご家族に看取られながら息を引き取られたという笑瓶さん。 

 近年は、34年間続いているTBS系の『噂の! 東京マガジン』の1本にテレビのレギュラーを絞り、亡くなる6日前の2月16日にも最新の収録を終えたばかりだった。それだけに司会の森本毅郎さん、清水国明さんら共演者のショックも計り知れないことだろう。数回取材しただけの私ですら訃報を目にしたときには呆然としてしまったのだから。

 今はただ笑瓶さんのご冥福をお祈りするばかり。笑瓶さん、楽しい温かい想い出をありがとうございました。