違法薬物をめぐり日本人観光客と“トラブル”
“犯罪行為”を気にかけないような人間性のため、オグは周囲に恐れられていた。現地に住むほかの日本人との交流も乏しく、A子さんいわく、島では「一匹狼」的な存在だったという。
「日本人とはつるまず、パンガン島にいるドイツ人相手に違法薬物を売って稼いでいました。あと、本人も薬物を使っていましたよ。タイは大麻が合法化されましたが、そういった類ではなくていわゆる“ハードドラッグ”と呼ばれるものです」(A子さん)
違法薬物をめぐっては、日本人観光客との間にある“トラブル”を抱えていたそうだ。
「観光で日本人の男の子がパンガン島に来ていたんです。オグとつるむようになってだんだんと様子が変わっていきました。見るからにやばい、ゾンビのような状態でした。しばらくして、その子が私の店に逃げ込んできたの。『オグに薬漬けにされ、動画を撮られて脅されている』って……。詳しく聞いたら、お金とパスポートをオグに取られて支配された状態でした。オグに電話をしたら、『なんで呼び出すんだ』って怒っていたけど、最終的には私を含めて話し合いをして、解決したけど……」(同前)
だが、A子さんが知るだけでも、日本人観光客とのトラブルは1度だけではない。
顔がボコボコに腫れあがった日本人男性
「実は同じようなことが前にもあったわけよ。観光で来ていた別の日本人の男の子なんだけど、オグと行動をともにするようになったの。でも、あるとき顔がボコボコに腫れあがった状態で私の前に現れたのね。『転んだんだ』って言ってたんだけど、そんな風には見えなくて。その子はいつしか見なくなっちゃったから、どうなってしまったんだろうかと心配している」
この男性は、ある日忽然と姿を消したため、島の日本人らの間では彼の身に何かあったのではないかと不安が広がったそうだ。彼の失踪にオグが関係しているかは定かではない。オグの周囲にはトラブルの気配があると、オグを知る人は口をそろえる。
「でもね」と、パンガン島に住むある日本人男性は言う。
「彼にはある種の魅力があるんですよ。良い悪い関係なしに、自分の生き方を突きつめている感じはかっこいいんですよね。ちょっと危ない香りがする“ワル”の魅力があるんです。だからオグが観光客を言葉巧みにだまして近づくというより、彼に興味を持って近づいてきた人を洗脳しちゃうような感じだと思う」