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「組織が生きるためには、はぐれ者の人生は軽く扱われなければならない」
《春日錦 生け贄って分かる? 上の人(上位力士)を守るために、下の人を切ったのよ。》
全容解明をという調査委からの求めに応じて、春日錦は聴取で上位力士を含む幕内力士の名を挙げる。ところがいつのまにか調査委が八百長の調査対象を春日錦を中心にした番付下位グループだけとしているのに気づく。
一方でそんな春日錦が暴発することを恐れる春日野親方は、本場所中止の経済的な影響や、八百長問題で理事になれなかったなどという栄達への未練を語り、しがらみで抑えようとするのであった。
「組織が生きるためには、はぐれ者の人生は軽く扱われなければならない」。前述の春日錦の嘆きから、つい思い出してしまったのがこの言葉だ。実はこれ、山之内幸夫『悲しきヒットマン』の締めの一文である。
おうおうにして、組のためにと対立する組織の幹部を的にかけて手柄をたてる、しかし組のほうはと言えばヒットマンを匿いきれずに持て余し、相手方と話をまるく納めたい上部団体の意向もあって殺害してしまう。
そんな具合に生殺与奪権を組織に握られた者の行く末はいつも切ない。