東出昌大(35)の主演映画『winny』が3月10日に公開される。演じたのは実在した天才プログラマー・金子勇。この物語には東出がここ数年考え続けてきた、“ある思い”が込められていた。(全2回の1回目/後編を読む)

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脚本を一読しても主人公がいまひとつ分からなかった

――今回の主演のオファーはどのように聞かされましたか?

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東出 まずは企画の説明を受けました。「複雑な事件について7年半に渡る裁判を闘った金子勇という人の物語」と。その後、脚本が届く前に自分でも調べて、初めて金子勇さんとWinnyについて知りました。でも金子さんについてはまだ懐疑的な感じでした。

©深野未季/文藝春秋

――追って届いた脚本を読まれて、どんな印象を受けましたか?

東出 実は脚本を一読しても金子勇という人がいまひとつ分からなかったんです。そこで劇中にも登場する弁護士の壇 俊光先生や金子さんのお姉様にお会いしました。特にお姉様は、日頃から自分が金子勇の姉であることを公にされていないので、プロデューサーさんからも「会ってくださるかどうかは分からない」と言われていました。でも会ってくださって、金子さんについてのお話をいろいろとうかがうことが出来まして。

――お姉様とはどんなお話をされましたか?

東出 金子さんの生家跡地を訪ねて、そこから壇先生とお姉様と食事をご一緒することになって。30分くらい車を走らせたところで、お姉様が、「ここ、弟が通っていた電気屋さん」とおっしゃって。生家から電気屋までの距離に驚愕しました。

――劇中、小学生の金子さんがマイコン(現代で言うパソコン)を触りたくて店頭まで足繁く通った電気屋さんですね。

東出 はい。夏の暑い日も、冬の寒い日も、マイコンに触れたいがためにこんな距離を自転車で通っていたのかと。金子少年の純真無垢なプログラミングに対する欲求は、大人になってもそのままだったんだと思いました。そんな金子少年の推進力は大事にしながら演じなければと思いました。

――他にはどんなお話をされましたか?

東出 お姉様が「日本は出る杭を打つ社会」と語っていらしたのも印象的でした。また「お父さんもお母さんもかなりの心労があった」と。ということは、お姉様ももちろんあったと思いますし。そこは(生前の)金子さんもずっと気にされていたと伺いました。