都会の喧騒を離れ、ひとり山の中で暮らす東出昌大(35)は“怒涛の5年間”を経てある思いが芽生え始めたという。今まで誰にも話せなかった日々に迫った――。(全2回の2回目/前編を読む)

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現在は山に暮らし狩猟生活。そのきっかけは…?

――東出さんは昨年の3月から関東近郊の山で暮らしています。その山は以前に狩猟の下見で訪れた場所だったそうですが。

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東出 はい。下見の帰りに車がパンクしてしまい、地元の方に助けて頂いて。その時、「土地も空いているし廃屋もあるし木も余っている。廃屋に住んでもいいし小屋を建ててもいいよ」と言って頂いて。

――現在の山暮らしでも狩猟生活をされているそうですが、そもそも狩猟免許と猟銃所持資格を所得したきっかけは?

東出 20代前半の頃、映画の撮影で滞在していたホテルにたまたま置いてあった千松信也さんの「ぼくは猟師になった」という本がきっかけでした。何となく読んだら興味を持って。その後も服部文祥(登山家)さんの著書や狩猟に関する本を読んで。その後、ずっと忙しくて、試験の日に仕事が重なって諦めたりしながらも、5年前にようやく狩猟免許を取りました。

©深野未季/文藝春秋

――山暮らしも1年になりました。もうすっかり慣れましたか?

東出 そうですね。この寒い中、水道管が破裂するとか、アクシデントもありますが、それはそれで勉強になるし(笑)。

――電気は通っているものの、ガスは通っていないそうですね。

東出 お湯は竈みたいなのがあって、薪を燃やして沸かします。竈の上に網を張って肉を置くとジャーキーが作れます。

――今のところ、山に来てよかったと思いますか?

東出 はい。僕が師と仰いでいる服部文祥さんが昨年『お金に頼らず生きたい君へ』という著書を出されたのですが、僕の持っている本は表紙をめくると服部さんの直筆で「東出昌大殿 めんどくさいが生きる喜び 服部文祥」と書いてあって。

 例えば山には木が溢れていて切り放題ですが、薪って均一に細くすれば出荷もできるんです。縦横の長さを揃えて見栄え良くすると、東京で薪ストーブ用に買ってもらえる。でも田舎で薪をくべていると、細いものもあれば太いのもあることに面白味がある。全て均一なら燃えるのも早いけど、細い薪にどう上手く太い薪を足して、どう空気が入れば火が長く持つのかと考える。ルンバに頼るのではなく、自分でほうきや雑巾をかけて、ああ、こんなに綺麗になったんだ、と感じる。不便だし、面倒かもしれないけど、僕はそうした時間がとにかく楽しい。

 いまは山菜のシーズンだし、きのこも自分で植えたい。山でやりたいことがいっぱいあるので、まだまだ当分は東京まで出稼ぎに行って山に帰るという生活が続くと思います。