――考えた末、何か答えは見出せましたか?
東出 決して軽々しく言い表すことは出来ませんが、「物事が絶対的に分かるということはない」ということだけは絶対的に分かりました(笑)。それと人のことでも自分のことでも、報道でも社会の在り方でも、とにかく「絶対に正しい」なんてことは無い、ということも。あとは、「いい仕事を頂けたらいいパフォーマンスで応える」「周りの人と楽しく暮らす」「人の悪口を言わない」「愚痴も言わない」。それぐらいです。いまの自分はとてもシンプルだと思います。
――「人の悪口を言わない」「愚痴も言わない」は、今回、東出さんが映画『Winny』で演じられた金子勇さんの劇中の印象とどこか重なりますね。
東出 いや、金子さんの人生はプログラミングで大きく評価されたわけだし。僕も別に性善説を振りかざしたいというわけではありません。例えば、誰かのスキャンダルが浮上すると、世の中には、報じられた人と直接関わり合いもなければ自身に不利益が生じるわけじゃなくても、「こいつ嫌いになったわ」と声を上げるかたがいらっしゃる。語り尽くされたことかもしれませんが、「なぜ?」という思いもあれば「仕方ない」と思う部分もある。でもその方たちからの見られ方だけを気にしていたら、俳優としての純粋性が損なわれる場面だってあるだろうし、自分自身も混乱してしまう。
僕は自分の人間性が正解だとは全く思っていませんし、今後も間違いを犯す可能性だって否定はできません。ただ、僕は自分の経験から、物事を考えるための大きなきっかけを頂けた。考えるために立ち止まれたことは、語弊があるかもしれないけど、自分にとって“豊か”でした。その豊かさの中身も決して一言では言い表せませんが、日々物事を考え続ける癖がついたことも例えばひとつの豊かさ。いまは率直に「みんなに幸せになってほしい」という思いがあるだけです。
東出昌大という役者のニーズを自身はどのように捉えているのか
――東出さんは「週刊文春CINEMA!」の 2022冬号から「山暮らし日記」の連載をスタートされました。どうしてご自身のスキャンダルを報じた「週刊文春」の姉妹誌で連載をスタートされたんですか?
東出 僕、元々出版社とか編集部とか詳しくなくて(笑)。連載の前に、「週刊文春CINEMA!」のロングインタビューを受けたのですが、その時に担当してくださった映画ライターのかたが「媒体の屋号が文春だし、取材も文春の人と行く。それが嫌だったらお断りしてください」と、丁寧な長文で僕の気持ちを慮ったご依頼をくださったので「これは信じよう」と思って。