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――昨年2月に前事務所を退所されて以降、東出さんはマネジメントに属さず、マネージャーも付けていない。出演の決定も、スケジュール調整も、完全にお一人でやられているのですか?

東出 そうですね。

――例えば仕事の請求書もご自身で出しているのですか?

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東出 はい。と言っても、まだ出せていない請求書が溜まっちゃってて(笑)。

――お住まいの山は携帯の電波が圏外。仕事のやり取りはどうされているのですか?

東出 脚本や交通機関のチケットは郵送で送ってもらいます。僕、携帯がガラケーなんですが、里に下りた時、着信が入っていたらかけ直すという感じで。

――なぜガラケーなんですか?

東出 スマホは、昔使っていたんですが途中で使うのをやめたんです。20代の始め、役者になってすぐの頃、ある芸能人の方と初対面でたまたま食事をする機会に恵まれた。その方は本当に感じが良くて、僕もすっかりファンになって。ところが、その後、その方はスキャンダルが報じられてマスコミから急激に叩かれた。日々、スマホにネットニュースが飛び込んでくる度に「本当はこんな人じゃないはずだ」と気を揉むんだけど、知っている名前だとつい読んでしまう。「この時間、無駄だな」と思って、そこからガラケーに切り替えました。

©深野未季/文藝春秋

――つまり、その当時から「喧騒と距離を置きたい」という意識が頭の隅にあった?

東出 ありましたね。いま思えば、まさにガラケーにしたタイミングからそうした気持ちを抱いていた気がします。

――東出さんは現在35歳。20代の頃のインタビュー記事を読み返したら「30代に入ったら楽になると思う」という発言をされていましたが、むしろ30代のほうが怒涛の日々となってしまい……。

東出 そうですね、怒涛でしたね。

30歳からの5年間は怒涛の日々だった

――ファッションモデルを経て24歳で俳優デビューされたわけですが、いま振り返って20代、そして30代に入ってからのここ5年間を振り返ると?

東出 20代は頭でっかちでちゃきちゃきしていたというか。いま思えば鼻も伸び切っていたかもしれないですね。30代に入る頃、「(俳優の)先輩たち、すごいな」とか、分かっていたつもりで分かっていなかったことに気付き始めた。でもそこから例のスキャンダルがあって。奈落と言ったら大袈裟かもしれないけど、大きな穴に落ちたような感覚でした。そこからはまさに怒涛の数年でしたが「自分には何が足りないのか?」「人って何なんだろう?」と考える大きなきっかけになりました。