「ここで満足なんかしていられません。僕の目標はまだ達成されていませんから」
2年生で不動のレギュラーの座をつかんだ浅野は、その年に秋田県で行われた全国高等学校体育大会(以下、インターハイ)でハットトリックを達成するなど、ベスト16入りに貢献。
高円宮杯JFA U-18プリンスリーグ東海でも得点王に輝くと、迎えた第90回全国高等学校サッカー選手権大会で彼の名は全国に轟くことになった。
1回戦の羽黒(山形)戦で先制点を決めると、2回戦の徳島市立戦でも1ゴール。3回戦の立命館宇治(京都)戦では、0-1で迎えた後半アディショナルタイムに起死回生の同点弾を挙げ、PK戦での勝利に導いた。
準々決勝の中京大中京(愛知)戦。1-2で迎えた後半アディショナルタイムにボレーシュートを決めて、2試合連続の起死回生の同点弾を挙げると、この勢いで再びPK戦を制して準決勝進出を決めた。
準決勝の尚志(福島)戦、「ずっとこの舞台でプレーすることを夢見ていました」と語る国立競技場での決戦で、彼は2ゴール1アシストと大暴れをし、チームを20年ぶりの決勝に導いた。
市立船橋(千葉)との決勝では、先制弾を挙げて1回戦から決勝まで6試合連続ゴールという離れ業をやってのけた。チームは延長戦の末に敗れて全国制覇こそならなかったが、得点王に輝いた浅野の大会となった。
この大会を境に、ピッチ上での彼のたたずまいにはオーラが漂うようになった。
彼を見ていると「隙ができたらいつでも仕掛けるぞ」「常にゴールを見ているぞ」とメッセージが聞こえてくるような、“危険な香り”を漂わせていた。
「ここで満足なんかしていられません。僕の目標はまだ達成されていませんから」
高校選手権での活躍で一気に注目度が上がったが、いっさいの慢心はなかった。逆に自分の信念を確認し、さらに貪欲さが増した。
彼が高校3年生になった5月、インターハイ三重県予選決勝に取材に行った。
ハットトリックの活躍を見せて2年連続のインターハイ出場を決めた彼は、試合後、応援に来ていた家族と話をしていた。浅野の脚には6男の子がくっついていて、その表情は優しいお兄さんだった。
「実はこれまで6人兄弟だったのですが、最近、妹が増えて7人になったんです」
そう笑顔を見せながら話した浅野の表情は、より決意にあふれているように感じた。
「妹のためにも僕が頑張らないといけないんです。大きくなって、お兄ちゃんがサッカーで活躍している姿を見せたいんです」
頑張る理由が増えた。彼が発する言葉の数々は、17歳とはとても思えないほど重みを感じる。
彼に対する尊敬の念はますます深まっていった。
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