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内田篤人から「『後悔した』なんて言うな」とメールが…代表戦後に批判された浅野拓磨が“先輩の言葉”に感涙したワケ

『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』より #2

2023/03/11

 2022年のカタールワールドカップで、森保一監督率いるサッカー日本代表が優勝経験をもつ強国のドイツとスペインを撃破。約30年かけて「ドーハの悲劇」を「ドーハの歓喜」に変えた歴史的な大会となった。

 ここでは、カタールワールドカップの熱狂やその舞台裏、中心選手たちの素顔や苦悩、歓喜を描いた安藤隆人氏の著書『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』(徳間書店)より一部を抜粋。ドイツ戦で逆転ゴールを決めたストライカー、浅野拓磨選手の素顔を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く) 

内田篤人が浅野拓磨に送ったメールの内容とは? ©文藝春秋 

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広島でのステップアップ

 この年、彼はサンフレッチェ広島加入が内定し、ついに絶対目標だったプロサッカー選手になることが決まった。

「攻撃的なサッカーで、ボールの支配率もJリーグのなかでトップクラス。自分に合っていると思いました。もうプロになることは達成したので、次はサンフレッチェでレギュラーをつかみ、日本代表になってワールドカップに出ることが絶対目標に切り替わりました」

 高校生最後の高校選手権前に取材したとき、彼は新たな目標に向けて目を輝かせていた。当時、広島には絶対的エースストライカーの佐藤寿人がいたが、彼にとっては尊敬する存在であり、ライバルだった。

「寿人さんはお手本中のお手本なので、いいところはどんどん盗んで、学んでいきたい。もちろんライバルとして見ていますし、寿人さんを追い越すつもりで選んだのもありますから」

 彼の言うことは決して大風呂敷ではなく、“本物の覚悟”を感じることができた。

 最後の高校選手権は初戦敗退となったが、彼は新たな絶対目標を掲げてプロの世界に飛び込んでいった。

 1年目の出番はほとんどなかった。だが、チームを率いていた森保一監督の下でプロサッカー選手としての土台を築いた。出番がなくても不満をいっさい言わず、貪欲に練習に打ち込んだ。

「監督に信頼されるためには、監督の求めることを求めるレベルでやってこそ。使われないのはそれができていないということなので、常に自分を見つめながらレベルアップに励んでいます。いま僕がやっていることに無駄なことなんて一つもないし、無駄な時間なんて1秒もないんです」

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