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内田篤人から「『後悔した』なんて言うな」とメールが…代表戦後に批判された浅野拓磨が“先輩の言葉”に感涙したワケ

『ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』より #2

2023/03/11
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 しかし、翌年5月31日のロシアワールドカップのメンバー発表で、彼は大きな悔しさを味わうことになる。

 本大会に挑む23名のリストのなかに彼の名前はなかったのだ。

 6月の本大会では、ロシアの地で快進撃を見せた日本代表をサポートメンバーとしてスタンドから見つめていた。

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 2-0からの逆転負けを喫したラウンド16のベルギー戦もスタンドから見つめ、敗戦の悔しさと自分がこのピッチに立てなかった悔しさの両方を味わうこととなった。

 自らのゴールでロシアへの切符をつかみ取ったはずなのに、自分はロシアのピッチに立てず、かつて一緒に戦っていた仲間の姿をただ見つめることしかできない。

 落選してからも、自身が決めたゴールシーンがテレビで流される。彼の心境を思うと言葉が出なかった。

オーストラリア戦でゴールを決める浅野拓磨 ©文藝春秋

もうどんなミスがあっても後ろを向くことはない

 だが、彼は“あきらめの悪い人間”。どん底に叩き落とされてから、ただで起き上がるはずがない。

「篤人さんのあの言葉を聞いたからには、どんなミスがあっても、どんなに周りに言われたり、自分が納得しなかったりしたとしても、僕が後ろを向くことはない。篤人さんの言葉を無駄にしたくないし、そういう人生を歩んでいきたい」

 彼はここからの4年間でこの言葉を有言実行していく。“巻き返しの4年間”のスタートは、彼が発したこの言葉からだった。

ドーハの歓喜 2022世界への挑戦、その先の景色』(徳間書店)

「次のカタールワールドカップは必ず出場する。もうそれしかないんです。落選したことで、やっぱりA代表は特別な場所だと思ったし、仮にアジア予選で結果を出しても、それは今後の何の保障にもならないことを痛感した。そのときに調子がいい選手が選ばれるものだし、序列なんて一瞬で変わる。でも、それをわかったうえでも絶対に次のワールドカップは出場したい。もう、こんな悔しい思いなんて絶対にしたくない。もう一度積み上げていきますよ、俺は」

 言葉に込められた魂は高校時代と変わらない。月日が経っても彼の言葉の力にはいっさい淀みはなかった。

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