演劇界のセクハラ防止に取り組んできた馬奈木厳太郎弁護士(まなぎいずたろう・47)が、依頼人である俳優の女性に性的関係を執拗に迫るなどのセクハラ行為を行っていたことが判明した。被害女性は3月2日、馬奈木弁護士を相手取って慰謝料1100万円を求めて東京地裁に提訴している。

セクハラが発覚した馬奈木厳太郎弁護士 ©時事通信社

 女性は舞台俳優として活動する傍ら、2018年に芸能界のハラスメント被害者を支援する団体「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」(なくす会)を設立した。馬奈木弁護士はこの会の顧問を設立時から務め、劇団や映画製作に携わる企業などでセクハラ防止の講習も開いていた。

 馬奈木弁護士の父親は、同じく弁護士の馬奈木昭雄氏。水俣病訴訟に身を投じ、諫早湾干拓事業をめぐる訴訟では国と対立する漁業者側の弁護団長を務めた大物弁護士である。

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 その影響を受けた馬奈木厳太郎弁護士も「もちろん父の影響もありますが、常に弱者に目を向けた母方の祖父の影響も大きい」(2020年6月1日付西日本新聞)と語り、福島の原発事故で避難した住民による集団訴訟の弁護団事務局長を務めるなど、弱者に寄り添う弁護士として知られていた。

「私に対して好意を寄せていると思い込み…」

 そんな馬奈木弁護士が、セクハラを防ぐ啓蒙活動の陰で自身の立場を利用して依頼者の女性に加害行為に及んでいたのだ。本人は3月1日に公表した文書の中で、自身のセクハラ行為を認めている。

馬奈木弁護士が発表した謝罪文書。自身の行為を「卑劣な、人として許されない行為」としている 本人HPより

<(裁判の依頼女性が)私に対して好意を寄せていると思い込み、身体に触れたり、身体の部位に言及したメッセージを送ったり、性的関係を迫るメッセージを送ったりしました。

 その方からはこれらを拒むメッセージや言葉を受け取っていたのですが、私はそのメッセージや言葉を真摯に受けとめず、自らの都合のよい方向に解釈し、性的関係を誘う言動を続け、依頼を受けていた裁判の対応にまで言及して、その方を追い込み苦しめてしまいました>