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「なぜ“本人”を取材せずに批判記事を書くのか」新聞記者に聞いてみると…『劇場版センキョナンデス』ができるまで

「なぜ“本人”を取材せずに批判記事を書くのか」新聞記者に聞いてみると…『劇場版センキョナンデス』ができるまで

2023/03/07
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まずは「香川1区」へ

 まずは香川1区にした。2021年の衆院選は、自民党から初代デジタル担当相の平井卓也氏、立憲民主党からはドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(通称:なぜ君)に登場した小川淳也氏が出馬。一騎打ちと言われていたが、日本維新の会の町川順子氏も出馬。にぎやかになっただけでなく現地では『なぜ君』の大島新監督が続編『香川1区』を制作中だという。どう考えても“まつり”である。

 あと、個人的にはご当地の四国新聞にも注目していた。四国新聞は平井卓也氏の弟が社長で、母が社主を務める。普通そうなると自意識が邪魔をして政治ネタはむしろ公平になると思うのだが、四国新聞はファミリーである平井卓也推しを隠さないのである。それだけではなく選挙区のライバル(小川淳也)に対してはとにかく厳しくてあの手この手でネガティブな記事を報じていた。しかも批判する本人には取材をしない。そんな「平井王国」に潜入してみたいという気持ちが止まらなくなった。

©プチ鹿島

 ちなみに選挙報道について他紙の政治部に取材してみると、

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「普通は小川氏に当てて、双方の言い分を書くでしょうし、ノーコメントだったとしてもその旨を書くと思います。選挙前ならなおさら気を使うところなのですが」

 という予想通りの答えが返ってきた。「新聞」であるなら選挙前はいつにもまして双方の言い分を書くが四国新聞では一方的になってしまう。四国新聞の記者はどう思っているのか。一秒でも早く見解を聞いてみたくなり旅立った。

四国新聞の記者に直撃! その返答は…

 投開票のあった10月31日の夜、遂に四国新聞の記者を見つけた。平井事務所から小川事務所に移動すると後方に腕章をつけた記者が複数いることに気づいた。私はもっとも年長に見えた記者に近づいた。「探検」のクライマックスである。すると……。