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「なぜ“本人”を取材せずに批判記事を書くのか」新聞記者に聞いてみると…『劇場版センキョナンデス』ができるまで

「なぜ“本人”を取材せずに批判記事を書くのか」新聞記者に聞いてみると…『劇場版センキョナンデス』ができるまで

2023/03/07
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 菅直人が「暴れ回っている」? 維新はそれを迎え撃つ? これはどこを見てもヒリヒリしてそう。そんなわけで大阪に密着したのだ。

 すると選挙戦の序盤と終盤で菅直人をめぐる空気が変化していることに気づいた。序盤は私たちの直撃になんでも喋ってくれた菅氏だったが、終盤は周囲のガードがすごい。なかなか質問させてもらえない。

「暴れ回っている」と報じられた菅直人。最初はなんでも喋ってくれたが… ©プチ鹿島

 これには思い当たることがあった。選挙戦の中盤から菅直人氏に対して「維新にやり過ぎじゃないか」という声が立憲民主党の内部から出ていると複数の週刊誌が書いていたからだ。現在、立憲と維新は「共闘」している。もしかして私はデリケートな時期にいろいろ聞きまわってしまったのだろうか? 映画では立憲候補者や幹部に質問しまくった場面を確認していただきたい。

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各候補者に質問しまくった筆者とダースレイダー氏 ©プチ鹿島
©プチ鹿島
©プチ鹿島

安倍元首相銃撃事件の一日

 そして何より観て頂きたいのは「安倍晋三元首相銃撃事件の一日」のパートである。

 あの日、我々の選挙漫遊の楽しさはいっぺんに吹っ飛んだ。いつもどおり朝からカメラをまわしていたので映像はドキュメントになってしまった。2人で呆然としながらも、あの日の空気や民主主義とは何か? を懸命に語り合った。

 あの日、まだ何もわからない状況下なのにSNSでは酷い言説が飛び交っていた。安倍氏と近しいと自称する人たちがまだ訃報が発表されていないうちから「こんな情報がある」とでも言うように自己アピールをしていた。その一方で我々が現場で見たものは、安倍氏と遠い立場にいるとされていた人の涙と沈黙だった。

 あの日のあらゆる人物の振る舞いを映像に収めています。ドキュメンタリー映画『劇場版センキョナンデス』をぜひご覧ください。私たちが未来に残したい「公文書」でもあります。

コロナ時代の選挙漫遊記

畠山 理仁

集英社

2021年10月5日 発売

「なぜ“本人”を取材せずに批判記事を書くのか」新聞記者に聞いてみると…『劇場版センキョナンデス』ができるまで

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