しかし、ここからが熊澤店主がユニークなところ。店主はそば打ちを教わらず、ホールや調理補助の仕事を続けて、師匠たちの仕事をずっと興味を持って観察していたという。その後、家で試行錯誤しながら自分でそばを打つようになったのだ。そしてそば打ちの魅力にハマってしまった。
「師匠が教えてくれるというのを辞退して独自の探求を始めた」というところが凄いわけである。それが高じてそばののし場が欲しくなり、そば屋をやろうと決意することになる。「自分のそばは師匠やその弟子の皆さんの足元にも及ばない。いつかお墨付きをもらえるまで精進する身」と店主はいう。
「これからも自分のそばと対峙して行きたい」
さらに「神田まつや」に対する感謝の念をひと時も忘れることはないという。「あの家族のような温かい店に許してもらい、お店を開くまでこぎつけることができて本当に胸がいっぱい。師匠や大女将さんや女将さん、調理場の職人さんやホールのお姐さん達、本当に皆さんのおかげでここまでこれた。自分は修行したわけではないので、これからも自分のそばと対峙することを忘れず続けて行きたい」と熱く語ってくれた。
反町駅近くにオープンした昼だけ営業の間借りの小さな店「立ち食いそば しおや」を訪問して食べたそばが、「神田まつや」で働いていた女性がそばに惚れ込んで打つ独自のそばだったとは想像もしていなかった。その味にはそばへの愛情や信念が強く練り込まれていた。いずれにせよ、清々しい取材になったことは間違いない。また訪問しようと思う。
反町から横浜までは旧東横線跡にできた「東横フラワー緑道」を歩いて散策もできる。大きく変貌する横浜西口を散歩するついでにぶらっと立ち寄るのもよいだろう。
INFORMATION
立ち食いそば しおや
住所:神奈川県横浜市神奈川区反町1-6-6
営業時間:月~土 11:00~14:00
定休日:日曜日