これまでに2000人以上のヤクザに会い、取材してきたという鈴木智彦氏。ヤクザ専門誌『実話時代 BULL』編集長を務めた後、フリーライター兼カメラマンとしてヤクザ関連の記事を寄稿し続けている。

 ここでは、鈴木氏が「教科書では教えてくれないヤクザの実態」について詳しくまとめた『ヤクザ2000人に会いました!』(宝島社)より一部を抜粋。知られざる「ヤクザと警察」の本当の関係とは……。(全2回の1回目/後編を読む

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報道されない「ヤクザvs警察」の舞台裏

 ヤクザを取材していれば、どうしたって警察と出くわす。なにせ両者は天敵同士である。義理事(冠婚葬祭)の会場も警察官が取り囲む。抗争事件になるとパトカーや機動隊を乗せたバスが事務所前に張り付く。たとえ会いたくなくても、顔を会わすハメになる。それで顔見知りになった警官もいる。

 時にはいやな目にも遭う。

 高速道路料金所を通過した地元組織の総長がヒットマン部隊に襲われ、3人の刺客が防弾ワンボックスカーを銃撃、車両を蜂の巣にした事件があった。幸い、乗っていた総長は無事だったのだが、跳弾が鋼鉄の防護壁がない車両底部からボディを突き破り、足を負傷したという。筆者も病院に行こうと思ったのだが、警備が厳重なはずなので、まずは組事務所の写真を撮るために本部に向かった。

 現地に到着すると某県警の車両が張り付いていた。

 無視してカメラを取り出すと、警察官が降りてきて、「おいおい、あんた。誰の許可取ってんの?」と話しかけてきた。

 暴力団事務所の外観を撮影するのに、許可など必要ない。少なくとも、警察の許可など絶対にいらない。頭に血が上った。

「そうですか。許可ってヤクザの許可ですよね? じゃあどいてくれますか。許可もらうんで」

 警察官を押しのけて事務所のインターフォンを押した。

「すいません、鈴木と申します。『実話時代』という雑誌で総長を取材させてもらったことがあります。今日の事件の取材に来ました。張り付いてる警官が『誰の許可もらってんだ!』と言うので、撮影許可が欲しいです。あと、よかったら事情を聞かせてもらえませんか?」

 事務所のドアが開いたので、振り返って警察に一礼して中に入った。1時間後、表に出ていって写真を撮ったが、警察官は車から出てこようとはしなかった。ガラスを叩いて呼び出し、「許可はもらいましたよ」と嫌味を言ってやろうかと思ったのだが自粛し、警察車両の周りをぐるぐる回りながら写真を撮った。

 警察はあらゆる手段を使って暴力団の行動の邪魔をする。が、さすがに我々のようなマスコミが取材を妨害されたり、不当に拘束されたりする事態は一度もなかった。その点、さすが日本は法治国家である。ツラが割れているからかもしれないが、事務所前で職務質問されたことは……一度だけある。