代役だったはずの男が主役へと躍り出た。

 ベンチに飾られる背番号51のユニフォーム。代表合流直前に左脇腹を痛めて出場を辞退した、シカゴ・カブスの鈴木誠也外野手が着るはずだったユニフォームで、ケガをした左脇腹には絆創膏が貼られている。

「やっぱりワンチームということで。誠也の気持ちというところもありますし、本人が一番、残念だと思うので、その気持ちをしっかりと持って僕たちは戦いたい。チームみんながそういう思いでやっていると思う」

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 初戦の中国戦後にこう語ったのは、その鈴木の代役として、右翼に入った近藤健介外野手だった。

©️佐貫直哉/文藝春秋

“つなぎの2番”が、侍ジャパンの牽引役に

 左翼の吉田正尚外野手、センターのラーズ・ヌートバー外野手に右翼の鈴木と、今回の侍ジャパンの目玉になるはずだった外野のメジャートリオ。鈴木が予定通り参戦していれば、当然のように控えに回っていたはずの近藤が、いまは打線の牽引役となっている。

 1次ラウンドの最大の敵と言われた韓国との試合。先発のダルビッシュ有投手が3回に捕まり、3点を先制された直後の攻撃だ。無死一、二塁から1番のヌートバーが中前に弾き返して1点を返し、なお一、三塁のチャンスから追加点を奪う中越えタイムリー二塁打で、その後の逆転劇を演出した。

3回、タイムリー二塁打を放つ近藤健介 ©️佐貫直哉/文藝春秋

「いい流れでヌートバー選手もつないでくれたので、犠牲フライを打つつもりでいったのがタイムリーという最高の結果になった」

 こう語ると5回には先頭打者で右越えのソロ本塁打。試合の主導権をぐいっと手繰り寄せたのも近藤のバットだった。

 鈴木の代役として先発に抜擢された“つなぎの2番”が、1番のヌートバー、3番の大谷翔平らと共に、侍打線を引っ張っている。