3月12日、福岡県警は、浴場の湯を年2回しか取り換えていなかったことなどが発覚し社長を辞任した福岡県の旅館「大丸別荘」の運営会社の前社長(70)が死亡したと発表した。遺書があったことから、自殺とみているという。福岡県警は10日、公衆浴場法違反の疑いで旅館と前社長の自宅を家宅捜索していた。「週刊文春」は事件発覚直後、社長(当時)にインタビューしていた。(初出:「週刊文春」2023年3月9日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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「ちょっと甘く見ていました。お客様には申し訳ない。全て私の怠慢です……」

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 消え入るような声で小誌記者に語るのは、福岡県筑紫野市の温泉旅館「二日市温泉 大丸別荘」の五代目社長(取材当時、3月2日に辞任を発表)・山田眞氏(70)だ。

大丸別荘の山田社長

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二日市温泉の利用客が体調不良を訴え、『レジオネラ症』と診断される

 二日市温泉は奈良時代から約1300年続く古湯で、「大丸別荘」は幕末の1865年に創業。約2万1500百㎡の敷地に約1万㎡の日本庭園が広がる高級旅館だ。

「“博多の奥座敷”と呼ばれる温泉郷の顔といえる旅館で、1泊2万〜4万円ほど。昭和天皇をはじめ、岸信介元首相や美空ひばり、吉永小百合など各界の著名人が宿泊したことでも知られます」(地元紙記者)

日本庭園は山田社長自ら設計

 そんな老舗宿の信用を揺るがす問題が発覚したのは2022年8月のこと。経緯について福岡県筑紫保健福祉環境事務所(以下、県保健所)の担当者が語る。

「二日市温泉の利用客が体調不良を訴え、医療機関で検査した結果、『レジオネラ症』と診断された。そこで大丸別荘の浴場にも立ち入り検査をしたところ、基準値の2倍のレジオネラ属菌が検出されたのです」

 この細菌は河川や温泉などに生息。レジオネラ症の症状は発熱や悪寒で、重症の場合は肺炎になるという。