正直やさぐれたオッサンが走り回るあまりカッチョよくない主人公ながら、そんなリアルな感情をもった人間味のある等身大のヒーロー像に観客は心を奪われた。ハリウッドのそれまでのヒーロー像を一変させた本作は映画史の事件であり、またエポックメイキングとして主人公ジョン・マクレーンと、それを演じたブルース・ウィリスは今なお語り継がれている。ちなみに後の2010年にはスタローン、シュワルツェネッガーとブルース・ウィリスの三人は『エクスペンダブルズ』で共演を果たしている。
『ダイ・ハード』以降は『アルマゲドン』『シックス・センス』とアクション以外でも…
『ダイ・ハード』以降のブルース・ウィリスは、アクションだけでなく、ジャンル問わず出演作が多いのも特徴だ。作品の評価こそバラツキはあるものの一年に2、3本は出演作があり、『アルマゲドン』が公開された1998年はほかに『マーシャル・ロー』と『マーキュリー・ライジング』が製作され、その翌年にはM・ナイト・シャマランの『シックス・センス』(1999)も公開されている。
また、アクション映画のほかにブライアン・デ・パルマの『虚栄のかがり火』(1990)といったドラマ作品、そしてテリー・ギリアム『12モンキーズ』(1995)やリュック・ベッソンの『フィフス・エレメント』(1997)のSF映画など、出演作のジャンルの幅も広い。なかでも『パルプ・フィクション』(1994)での荒々しさとピュアさが同居した危うさが漂うブッチ役は、『ダイ・ハード』以降のブルース・ウィリスではナンバーワンの素晴らしさである。
その後もM・ナイト・シャマラン監督やクエンティン・タランティーノ作品に出演し続け、そしてライフワークともいえる『ダイ・ハード』シリーズは5作まで続いた。
皮肉めいた笑顔と“ブルース・ウィリスの色”
こうしてブルース・ウィリスが演じた多くの映画を振り返ると、ちょっと皮肉めいた特徴的な笑顔が思い浮かぶのは共通しているが、演じた役柄それぞれが彼から大きく離れずに、ブルース・ウィリス色に染められていたことに気付く。
「僕は大作からインディまであらゆるものをこなしてきた。主役もやれば、他人の映画にほんの小さな役で出ることもある。キャリアが終わる時に、手のひらの中になるべくたくさんのカラーが残っているようにすることなんだ」(キネマ旬報2007年7月上旬号)
引退も表明し、もう彼の新作を楽しむことができなくなったのは残念だが、これからも出演映画の中でブルース・ウィリスの色は輝き続けるのだ。
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【参考】
・ヴィジョンズ・オブ・アルマゲドン(ソニー・マガジンズ)
・アルマゲドン(映画パンフレット)
・ブルース・ウィリス:デラックスカラーシネアルバム(芳賀書店)
・キネマ旬報 2007年7月上旬号No.1486
・キネマ旬報 2009年2月上旬号No.1525
・過去配給収入上位作品1999年(1月~12月)日本映画製作者連盟(http://www.eiren.org/toukei/1999.html)
・娯楽アクション大作の王者、マイケル・ベイ監督作品のデータをまとめたインフォグラフィック(https://dailynewsagency.com/2011/11/03/bayhem_internets/)