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X氏が問題視した「オムニバス口座」
東京地裁も認定したシティがX氏を解雇した理由は〈コミュニケーションの問題〉。裁判でもシティ側はX氏が〈会社に混乱を生じさせ同僚や上司に不適切な態度をとったこと〉などを指摘していた。しかし、一方のX氏は、こうした言動をとった背景には、在職中、同社の〈税法違反〉を指摘していたことがあると主張したのである。
X氏は2022年9月に東京高裁に提出した控訴理由書にこう記している。
〈被控訴人(シティ)においては税務処理上の問題等深刻な問題があった〉
何を問題視したのか。例えば、X氏の主張の1つはシティが「オムニバス口座」と呼ばれる口座で適切な税務処理をしていなかったことだ。
通常、海外投資家は「グローバルカストディアン」と呼ばれる海外の金融機関(バンク・オブ・ニューヨーク・メロンなど)を通じ、シティのような日本における「常任代理人銀行」に株式の管理を任せている。
グローバルカストディアンは常任代理人銀行=シティに口座を開設する。投資家ごとに開設する場合は「セグリゲート口座」、複数の投資家の証券を預ける場合には「オムニバス口座」と呼ばれる口座を使用する。「セグリゲート」の口座名には個別の投資家名が冠されるのに対し、「オムニバス」の口座名はグローバルカストディアン(金融機関)名義となる。
X氏によると、シティは〈所轄税務署に対し、(最終投資家の)配当に係る所得税の支払調書を作成提出する必要がある〉といい、〈支払調書は、配当の支払を受ける「各人別」に作成することが(所得税法で)義務づけられている〉という。