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《戦禍の中の日常》「岸田首相、ウクライナ来たらどや?」不肖・宮嶋が撮った、戦争にへこたれないウクライナ国民の「余裕」

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2023/03/19

 不肖・宮嶋、再びウクライナ第2の都市、ハルキウに戻ってまいりました。

 思いおこせば7カ月前は砲声と爆発音が止むことがなかった日常であったが、なんとインター・シティー(高速列車)が時刻表通りに走ってるのである。ハルキウだけちゃうで。こないだ集合団地がロシア軍に襲われたドニプロも、そのさきのザポリージャにも、最近までロシア軍が居座っていたヘルソン近くのミコラーエフにも、イジュームにも、さらにその南のスラビヤンスクにも、最近世界遺産に登録されたオデーサにも、ちゃーんと鉄道が通っているのである。(全3回の1回目/#2#3を読む)

雨のオデーサ駅。今年は明らかに暖冬。オデーサ町中は停電していたが鉄道駅には通電していた。キーウからの夜行列車は時刻表と1分と違わず早朝到着。料金は2等寝台(4人部屋)で20ドル。激安だが、清潔でゆっくり眠れた ©️宮嶋茂樹

活気の戻ったプラットフォーム

 地方はあれほど停電続きやというのに鉄道が1分と遅れんのは、まさにウクライナ国営鉄道の意地であろう。かくして首都キーウからわずか5時間ちょい、新幹線よりはゆっくりやが、インター・シティーは時刻表きっちりにハルキウに到着した。

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 7カ月前はがらがらだったプラットフォームには、すでに赤帽(ポーター)が台車を抱えて待機しとるのである。しかも荷物1個につき70フリブナ(2ドル弱)である。車1台通ってなかった駅前ロータリーには出迎え、見送りの車で渋滞とまでいかんが、後を絶たず、客引きのタクシー運転手が「クダー(どこへ行く)?」「タクシー」と次々声をかけてくる始末なのである。

ポーランド国境の町、ラタパタ。ウクライナ人は本当にペット好き。ペット専用リュックを背負い、そのまま国境も越える。検疫は実質ないみたいである ©️宮嶋茂樹

 昨年のウクライナ侵攻でスマホ駆使し始めて、不肖・宮嶋もずいぶんモバイル化が進んだもんである。UklonやBoltなどのアプリを使い、リアルタイムで白タクを呼べるようになった。不愉快な値段交渉もなしに、リーズナブルな値段で長くても15分も待てば迎えの白タクがやってきよるのである。

ヨーロッパ最大級を誇るハルキウ市の勝利広場に突き刺さったロシア軍の放った不発ロケット弾とそれにより破壊されたハルキウ州庁舎をバックに記念写真に収まる。州庁舎には新年を祝う政府からのメッセージが掲げられていた ©️宮嶋茂樹

長期滞在の覚悟でアパート型ホテルへ

ショッピング・モール入り口にそびえるオブジェもクリスマス前からサンタ・ルッ
クになった ©️宮嶋茂樹

 以前のハルキウにはまともなホテルもなく、現地映像作家デニスとともに、人形劇劇場に下宿していたが、今回はインターネットを通じ3つ星から5つ星までのホテルが予約できるのである。不肖・宮嶋も長期滞在を覚悟し、今回はアパート型ホテルにチェックインしたのであった。

 7カ月前下宿していた劇場は表通りの「憲法広場」に面した一等地であったが、まさにその裏通り「プーシキンスカヤ通り」に面した裏路地の奥に、不肖・宮嶋の仮の棲み処となるアパートがあった。管理人に電話すると、1階まで降りてきて、鉄製の門を開けてくれやっと中に入れた。

 ロシア軍のミサイルを食らったら一発で倒壊しそうな古いビルである。大人ひとりで満員になる1基しかないエレベーターで4階に上がると、果たしてその一角がアパートホテルであった。一応電気は来ているようやが、天井の高い建物は古いせいもあり暗く感じた。

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