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「4人の男のDNAを調べても、お腹の子の父親はわからず…」“行列ができる”DNA鑑定所に持ち込まれる「訳アリ依頼の数々」と「頻発するミス判定の怖さ」

「4人の男のDNAを調べても、お腹の子の父親はわからず…」“行列ができる”DNA鑑定所に持ち込まれる「訳アリ依頼の数々」と「頻発するミス判定の怖さ」

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 子どもが大きくなるにつれて「この子は自分と顔が似ていないけど、本当に自分の娘なのか」と不安に駆られる父親、あるいは、妊娠したものの同時並行で複数の男性と関係を持っていたため父親が誰だかわからない女性、はたまた、旦那の不貞を暴こうと執念に燃える妻、息子の痴漢の冤罪を訴える母親――。東京都足立区にあるDNA鑑定会社「株式会社seeDNA」には、日夜問わず、そんな“疑惑”に翻弄される人々からの相談がひっきりなしに来るという。

写真はイメージ ©AFLO

 さながら“行列ができるDNA鑑定所”だが、同社の富金起範社長は「さまざまな問い合わせがあるなかで、いま問題となっているのがミス判定によるトラブルです。当社にはDNA鑑定の結果に疑問を持ち、再確認のための鑑定を申し込まれるお客様が多くいます」と語る。

 DNA鑑定の最前線でいったい何が起きているのか。実際に持ち込まれた“訳アリ”依頼とともに、ミス判定によって家庭が崩壊してしまう可能性もある「親子鑑定」について富金社長に訊いた。

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富金社長

「妊娠したが父親が誰かわからない」と4回依頼

 同社は「親子鑑定」や「浮気検査」など法科学検査を主力事業としており、なかでも「出生前DNA鑑定」は既存の感度を3倍ほど改善した最新の方法を世界で初めて開発し、日本、アメリカ、中国、韓国で年間4000件以上の法科学鑑定を行ってきた。富金社長は「2017年に国内初となる血液による妊娠中のDNA親子鑑定技術を開発して以来、たった1件のミス判定もない」と胸を張る。

 そんな同社のもとにある女性から相談が来た。妊娠したが父親が誰かわからないのだという。

「通常、相談相手とは電話やメールなどでやり取りするだけなので対面することはありません。そのため素性やプライバシー、個別の事情については一切わかりませんが、ある男性の検体を送ってきて、お腹の子の父親かを調べてほしいと依頼がありました。その結果は“親子ではない”というものでした。その後、また別の検体が送られてきたのですが、こちらも親子ではなかった。さらに、『別にいるはずだ』ともう2回、結局計4回の鑑定をしたものの、いずれも親子関係は認められませんでした。その女性は、5回目は諦めたようで、その後の連絡はありません。普通だったら2人目くらいで当たるものなのですが…」(富金社長)

親子鑑定を行う機器 ©seeDNA

“望まない妊娠”をした女性への支援も

 また同社は、性暴力被害者に対して「妊娠中DNA鑑定」の無償提供サービスを行っている。“望まない妊娠”をした女性を支援するための社会貢献だ。

「『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター』への2021年度の相談件数が5万8771件で、前年度比約1.1倍に増加しましたが、なかでも深刻な問題は“望まない妊娠”です。現状の被害者支援としては人工妊娠中絶費用を支給する犯罪被害給付制度もありますが、妊娠をした胎児の父親が加害者ではなく、正当なパートナーであった可能性もあります。

 また仮にDNA鑑定を希望する場合も、高額な鑑定費用がネックとなり、やはり中絶を選択してしまうケースもあるでしょう。そうしたなか、必要な条件を満たして頂いたうえで、私的鑑定(税込10万9800円)を無償で提供しています」(同前)

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