2022年9月2日に100周年を迎えた「東急株式会社」。この100年の間に、東急という会社だけでなく、東急沿線の街も大きな変貌を遂げてきた。

 ここでは、東急グループの常務役員・東浦亮典氏が、東急のまちづくりや、コロナで変わる新たなビジネスモデルについて語った著書『東急百年 - 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ -』(ワニブックス)より一部を抜粋。東急沿線の街、代官山、中目黒、自由が丘について紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

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代官山駅 渋谷駅からの遊歩道ができて広域渋谷圏に

代官山駅 ©AFLO

 最初は渋谷の隣、「代官山駅」です。 

 渋谷の再開発が駅の中心部から徐々に周辺部に移っていく中で、現在建設中の桜丘口地区の再開発に触発されて、その後背地でも再開発事業が検討されています。 

 また渋谷ストリームの開発によって、旧東横線高架橋が撤去されて、代官山方面に遊歩道ができたことから歩行者交通アクセスが改善し、心理的にも代官山が広域渋谷圏に取り込まれてきたような感じです。

代官山駅 ©AFLO

 もちろん代官山は渋谷とは一味違ったオトナのグルメ、ファッションの街で、ややスノッブな雰囲気ももっている個性的なエリアです。

「新しい大人文化を提案する街」「都心でのライフスタイルの創造」

 当初は街のイメージを壊すのではないかと地元から懸念を抱かれたカルチャー・コンビニエンス・クラブの「代官山プロジェクト」も、2011年に「代官山T-SITE」としてオープンすると、その「新しい大人文化を提案する街」「都心でのライフスタイルの創造」というコンセプトが多くの人の支持を受け、いまではすっかり代官山の顔となっています。

 私も学生時代から代官山には出没していましたが、どちらかというと小さな個性的なショップの集積体といった感じで、代官山に来街した人が必ず立ち寄るようなランドマークになる場所は、それほど多くありませんでした。

 もちろん著名な建築家、槇文彦氏が設計を手掛けて1969年に旧山手通り沿いに建った「ヒルサイドテラス」は名建築で、代官山のイメージを決定づける役割を果たしましたし、いまでも古びることなく人を惹きつける力がありますが、多くの人が長時間滞留するようなタイプの施設ではありません。

 その点代官山T-SITEは、本というものを媒介にして、幅広い人を集めて、滞留する代官山のディスティネーションになりました。

©AFLO

 ここ数年でいくつかのビル・マンション開発が行われていますが、渋谷ほどの大規模再開発が行われるようなエリアではないので、全体的な雰囲気は保ったまま、またブランドイメージを維持しながら、ゆっくりと成熟の時を重ねていくことでしょう。