大阪府堺市が公共工事を巡り、地元住民からの度重なるクレームなどを受け、ホテル確保などの便宜を図ったり、請負業者に支払う工事費を異例な形で増額している疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。

 大阪府の中南部に位置する堺市は、約80万人の人口を擁する政令指定都市。大阪維新の会顧問でもある永藤英機市長(46)は「身を切る改革」を掲げ、税金の使い道に厳しい視線を注いできた。

「永藤氏は大阪府議を2期務めた後、2019年の市長選で初当選。任期満了に伴う6月4日投開票の市長選に再選を目指し、立候補する意向を表明しています」(府政担当記者)

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維新府議(2期)を経て、2019年に当選した永藤市長 ©時事通信社

水道工事の間、クレームを繰り返す高齢女性にホテルを手配

 その堺市役所内で、有名な高齢女性がいるという。

「70歳前後とされるAさんです。よく愛用のシニアカー(高齢者用の電動カート)に乗って役所に現れ、早口の関西弁でまくし立てる。ガスでも水道でも工事を見つけると、すぐクレームを入れます。Aさんの携帯からの電話は出ないようにしても、別の番号から電話がある。職員が水をかけられたこともありました」(堺市役所の現役職員)

 Aさんが住む団地前で、堺市上下水道局が発注した配水管の布設工事が始まったのは、2021年6月頃のことだった。

「案の定、Aさんから『水道工事はやめて』『なんで(問い合わせ先が)ナビダイヤルの電話やねん。待ってる間に電話代かかるやろ』『夜寝れへん』などと抗議が入りました。他にも、『私が怒ったらすぐに職員は帰るやろ』『水道局はいっつも上から目線や』と職員の対応ぶりに文句を言ってきたり……。それで、『工事はやめろ』と同じ話を延々繰り返す。水道局では、彼女の度重なるクレームをまとめたメモも“行政文書”として作成。それで請負業者と相談し、特別にホテルを確保することになったのです」(水道局員)

 請負業者が明かす。

「Aさんの抗議で3カ月ほど工事は止まり、年末に約1カ月ホテルを手配した。工事の中断のコストも含めて、数十万円かかった。公共工事の費用で『ホテル代』とは書けない。色んな工事費に混ぜて処理したと思う」

 実はこの過程で請負業者に対し、異例な対応がなされていた。「週刊文春」は、堺市役所に配水管布設工事などに関して、情報公開請求を実施。開示された黒塗りを含む文書を基に、別の水道局員に尋ねると、こう口を開いた。