労働単価の独自の計算式を編み出して支払い工事費を増額
「流石に工事を中止するのは無理でしたが、近隣に配慮し、元々の契約では夜間施工だったのを昼間施工に変更した。交通の便などに大きな影響が出るものの、夜間のほうが単価は高いため、業者に支払う工事費は減額される。ところが、その減額分を穴埋めするかのように増額して支払っているのです」
一体、どんなスキームを取ったのか。
「一般的に一日の労働時間は8時間以内です。国交省土木工事標準積算基準では、時間的制約を著しく受ける工事(1日4.5~7時間しか作業できない)の場合、労務単価を1.14倍に割り増しすると定められている。この倍率を補正係数と呼びます。今回は事実上、施工時間は“昼間の5時間だけ”と時間的制約を著しく受けるため、規定通り1.14倍を適用すべきでした。ところが「1.14が“≒8÷7”なので、5時間の場合は“8÷5=1.6”という独自の計算式を編み出し、労務単価を1.6倍まで割り増ししたのです。つまり、補正係数は1.6となり、支払う工事費も増えます」
結果、業者に支払う工事費が450万円ほど増額されたというのだ。
「こんな計算式は使ったことが無い。Aさんのホテル代捻出のために工事費を上積みしたのでは、との疑念も出ています」(同前)
国交省建設システム管理企画室の担当者も首を傾げる。
「国の基準を準用しているとはいえ、あくまで決めるのは自治体。ただ1.14という補正係数を変えるというのは、あまり聞いたことがありません」
また、配水管布設工事などに関する堺市への情報公開請求を巡っては、「週刊文春」は、工事監督記録簿や工事打合せ簿、住民対応などを記録した議事録について請求していた。ところが、「公開決定通知書」からは、そもそも議事録についての回答が無く、工事監督記録簿や工事打合せ簿などについてのみ、一部黒塗りのうえで開示された。つまり、議事録については情報公開請求されていたにもかかわらず、堺市役所は無かったことにしていたのだ。
Aさんはホテルの便宜について「それ、あかんでしょ」
Aさんに話を聞いた。
――水道工事がうるさい?
「決まってるやろ。(配水管の布設工事が)昼になってもっと渋滞して。水道局って頭おかしいねん。二十何年住んでいるけど、ずっと工事なんや」
──堺市がホテルを用意した?
「それ、あかんでしょ、税金でそんなこと。誰が言うてんの? 私、水道局と仲良くないから。もう訪ねてくんの、やめといて」