まつもと その前に、ちょっといいですか! そもそも、養成所には30人くらいの人がいて、そのなかから選ばないといけません。そのうえで、コメはコミュニケーションの取り方がそつなくてクラスの人気者みたいな雰囲気だったんです。そのときに欲しいリアクションや、適切な言葉を発する能力が高いと感じました。それに演技力もあるし、慶應卒という肩書きもついているので、相性はいいなと思ったんですよ。

コメ ねっ! わかります? これなんですよ。あのときもこんな感じの温度感で「いやぁ、もう絶対僕たち商品価値が出てくるから!」みたいなことを最初から言ってきたんです。完全にやばいヤツじゃないですか(笑)。なので、一旦は「わかりました。タイミングが合えば」と言って断りました。

モノボケで警官の帽子をかぶる「まつもと」と鼻フックをされながらツッ込む「コメ」 ©文藝春秋 撮影/上田康太郎

審査の怖さを知らないコメを口説き落としたまつもとの狙い

まつもと 実は、僕は松竹芸能の養成所に入る前に、1年間、別のプロダクションの養成所に通っていたんです。でも、審査に受からず、所属することができませんでした。だから、必死ですよね。最初から温度感は高いですし、「もうガチでしょ!」と思っていましたから。養成所では誰と組むかが重要で、相方探しは早い者勝ち。そもそも組んでみないと本当の合う・合わないは分からないから、気になったら、さっと組めばいいんですよ。みんなモジモジして時間を無駄にしていると思います。 コメは僕よりも事務所は違えど、養成所に入って来たのが半年遅いので、まだ審査に通る・通らないという現実の怖さを知らなかったんでしょうね。

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コメ そうですね。今から見れば、そうだったと思います。

――いつ頃から一緒にやろうという流れになったのでしょうか?

まつもと お互い別々のコンビでやっていたのですが、M-1は一緒に出ようと言っていました。M-1は相方を変えて別のコンビ名で応募すれば何回でも出られるので、「経験を積むためにも出よう」と。そうしたら、ネタの出来が悪くなくて、養成所の先生からも評価してもらったんです。そこから「この二人でやったほうが芸人になれる可能性高いんじゃないか」という話になって、「これは落とせるな」と(笑)。

コメ 当時のコンビではうまく行きそうになくて焦っていたんです。完全につけ込まれましたね。好きな人とうまくいっていなくて悩んでいる女の子がちょっと言い寄ってきた男に落とされるみたいなシチュエーションです。

鼻フックをされるコメ ©文藝春秋 撮影/上田康太郎

「これはビジネス」と言い切ってしまう行き過ぎた合理性

――まつもとさんの狙い通りですね。実際に組んでみて相性はどうですか?

まつもと 僕はすごく合っていると思います。まず、何と言ってもこれはビジネスなんです。自分たちが売り物であるという基本的な目線が合っていますね。

コメ これもいつものパターンですね(笑)。この人、ちょっと行き過ぎた合理性を追求するところがあって……そこはやめて欲しいです。それと納得するまで質問攻めにするとか、理屈っぽいところはあります。でも、相性はいいですし、まつもとは誤解されやすいんだと思います。そのあたりはお互いに補い合っている感じですね。