1ページ目から読む
4/4ページ目

まつもと そうですね、すごく補完性があると思っています。

――ネタはまつもとさんが作っているそうですね。気をつけていることを教えてください。

まつもと ネタ作りにおいては、僕は自分のことをあまり信用していません。自分が面白いと思ったことは、基本的に面白くないと捉えています。なので、とにかく客観的な意見を重視しています。これまでの勉強とか仕事なら、間違えたりダメだったりしてもたいていの場合は改善点があります。つまり正解があるわけです。でもお笑いはそこがよくわからない。なので、なるべく周りの人の意見を聞くようにしています。

ADVERTISEMENT

©文藝春秋 撮影/石川啓次

人に笑ってもらうことは本能的に嬉しいし、抗いがたい快楽

――舞台ではネタの良し悪しだけなく、場の空気もありますよね。何度か舞台に立った実感はいかがでしょうか?

コメ 普通の仕事ならある程度準備をすれば、それなりの成果が出るものですが、お笑いの場合は舞台上で何も対応できなくなるときがあります。ある舞台では受けていたネタなのに、今回は全く笑いが起こらなかったとかですね。そこは“空気”としか言えません。でも、逆にバチっとハマった一言が言えたときとかは、普段の仕事とは比べものにならないくらい気持ちいいです。

まつもと 人に笑ってもらうのは本能的に面白いし、嬉しいんでしょうね。これは抗いようのない快楽です。それがベースにありますが、やっぱり難しいと常に感じています。ウケるウケないの仕組みがわからないんです。いろんな要素が絡み合っているわけですが、どの要素とどの要素が連動しているのかとか、どの要素がどれくらい重要なのかなど、お笑いの世界の方程式が分析しきれていません。

コメ やっぱり合理主義的でしょ(笑)。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

お笑いのスキルはすべての仕事に通じる

――お笑い芸人を目指しながら、いまのお仕事もこなすのは大変ではないですか?

コメ 仕事に支障が出ないようには気をつけています。むしろ、お笑いのための時間を作らなきゃみたいな思考になるので、慢性的な残業などはなくなりました。周りからは「人が変わった」と言われます。

まつもと いまの仕事は成果主義なので、割と時間のコントロールが利くんです。家事と育児もやっているので正直手が回っていないときもあるのですが、基本的には両立できるし、言うほど大した問題ではないと思っています。

――では、社会人がお笑い芸人を目指すことをすすめられますか?

コメ やるべきです! お笑いのスキルってすべての仕事に通じる基礎体力みたいなところがあります。相手の一挙手一投足を見て何が適切かとか、この場でこう振る舞ったらいいとか、周りがこう動いたから自分はこう動こうとか、そういったセンスが凝縮されているので、絶対に普段の仕事にプラスになりますよ。

まつもと 逆に、仕事を通じて得た経験の蓄積やそれまで歩んできた人生が、お笑いにいい影響を与えることもあるのかもしれません。お笑いや芸事ってとにかく若いうちから時間を惜しんで取り組んできた人のものみたいな考え方が主流かもしれませんが、僕らのように違う世界から飛び込むのもアリだと思う。まだデビューもしていないコンビがこうしてインタビューをしてもらっているのも、僕が総務省時代にメディアの人たちと飲みまくっていたからですしね(笑)。(#2へ続く)