「あなたみたいなひよっこに大丈夫なの?」
そしてこの映画で彼は小雪と出会い、松山が「がむしゃらに押して」プロポーズし、2011年4月1日、めでたくゴールイン。とはいえ、正直両者かなりムードが違う。そして小雪が8歳上。また、松山が結婚を前提にお付き合いを申し込んだ際、
「あなたみたいなひよっこに大丈夫なの?」
と小雪が返したというエピソードを記事で読み、松ケンを「ひよっこ」と言うか! と驚いた。そして「過酷な映画のつり橋効果で結婚に至ったのではなかろうか。夫婦格差や価値観の違いが早々に出てくるのでは」と勝手に心配したものだ。しかしそれは本当に勝手で余計な心配だったようで、現在もおしどり夫婦として知られている。
2018年ごろから松山の希望で東京と自然豊かな地方との2拠点生活をはじめ、田舎暮らしの際は、畑仕事や狩猟をしているという。さらには2022年1月に害獣駆除された鹿猪獣皮をアップサイクルするライフスタイルブランド「momiji」を設立。それから1年が経つことになる。田舎暮らしは自然相手なので、継続するのがものすごく難しい。獣皮リサイクルに至っては、片方が「やりたいから」といってそうそう楽しめるものではない。吊り橋効果どころか、スケールの大きさを感じるカップルである。
松山ケンイチの素朴さ
松山ケンイチの演技力に話を戻そう。「カムイ外伝」に「銭ゲバ」「平清盛」「聖の青春」など、一般の概念から離れた「過酷な孤独を抱える存在」を演じさせれば唯一無二の松山。だが、冬クール好評を博した金曜ドラマ「100万回言えばよかった」(TBS系)で演じた魚住のように、広い大地のような包容力を持つ役も、子犬のような純朴さを持って、ファンタジーにリアルを吹き込んでくる。映画「デトロイト・メタル・シティ」のキノコ頭のやさしい根岸崇一や、ドラマ「ど根性ガエル」のひろしのような、下手したら大事故になりそうな設定も、私たちが日常の忙しさで忘れてしまった感覚を、ふんわり思い出させるように演じ、温かい気持ちにさせてくれる。
ちなみに、「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザーII世役は、あの扮装じゃないとできないため、姿が映らないアフレコ録音の際も、服からメイクまで完璧な状態で臨んだという。「今思うと、面倒くせえ俳優だなと思う」とご自身で回顧されていたが、いやもう俳優という仕事は大変なのだと驚く。