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本多正信の再登場はいつなのか

 松山ケンイチのふり幅は広い。その面白さは、彼の著書にあるように「敗者」になれる思いきりのよさにあるのだろう。帯に躍るコピーの通り、「堂々と敗ける。」。

「敗者」とひとことで言っても、勝負に負けるだけではなく、時にははけ口として矢面に立ち、時には勝者を立てるため、一歩引くこともある。

 大河ドラマ「どうする家康」第9回でも、彼が演じる本多正信は、一向一揆での裏切りにより捕らえられる。家康(松本潤)と対峙する場面では「敗けて勝つ」不思議と清々しい明るさとがあった。

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 本多正信は、この9回でいったん抜けたが、松山本人もいつ再登場するか知らないらしい。史実では諸説あるが、三河追放から7年後、姉川の合戦(1570年)では、家康側に従軍している。現在放送中の駿河侵攻は1568年。4月16日放送(4月9日放送はお休み)の舞台、金ヶ崎の戦いは1570年。あれっ、もうすぐ戻ってくるのか? いや、伊賀越えあたりまで引き延ばすのか。意表を突いてくる古沢良太脚本、どういった劇的なシーンが用意されているのか楽しみである。どちらにしてもその後、家康の信頼を得て重用される正信。飄々としながら劇薬のようなパンチを持つ松山ケンイチの相棒感と怪しさが、家康の天下取りを支えていくのは、後半の大きな見どころとなるだろう。

自然児全開、コミカルな演技に期待

 3月24日からは、主演を務める映画「ロストケア」が公開。42人を殺害した介護士、斯波を演じている。メガホンをとった前田哲監督はスポーツ報知のインタビューで「松山さんは天才的に芝居がうまい。この世代でずば抜けている」と評している。6月23日からは、映画「大名倒産」が公開予定。こちらは徳川家康の血を引く、松平新次郎役。「うつけ者だが庭造りの天才」という役どころで、自然児全開、陽の松山ケンイチが楽しめそうだ。コミカルな演技に期待!

 2012年、歴史上最強の「勝者であり敗者」を演じた彼の器は、11年の時を経て、恐ろしく大きくなっている。2023年は、松山ケンイチに翻弄される1年になりそうだ。