結局、三菱ふそうは、一部の要求には応じたものの全面的にクノール社側が満足する回答を出さず、実際に供給制限が行われた。前出のメーカー幹部が続ける。
「供給制限のため1週間で数百台の生産ロスが発生したそうです。仮にこの状況が1カ月続くと数億円の損害となる。国内認証に関わる重要保安部品のため耐久評価も必要で容易に切り替えもできない」
クノール社日本法人に取材すると…
交渉の場にいたクノール社のドイツ人幹部に、電話をすると「なんで私にそんなことを聞いてくるのか理解できない」とすぐに切られた。
同社に質問状を送ったところ、日本法人の石橋誠代表本人から電話とメールで回答があった。
「商談の中身とか、こういう商談があったということそのものがお客様との守秘契約になるのでお答えできない。当社の従業員がお客様に対して声を荒げたり、相手の人格を否定したりということが(質問事項に)あったので、私の方から重要なお客様である日野様、いすゞ様、ふそう様にそれぞれお電話をして確認をしましたが、3社ともそういう事実はないということです」
三菱ふそうにも取材を申し込んだところ、
「弊社では個別のサプライヤー様とのお取引についてはお伝えすることはいたしかねます」
との回答だった。
高いシェアを持つ1社の部品メーカーによる値上げ交渉により、大手トラックメーカーが生産ロスにまで追い込まれることが明らかになった。自動車部品は、数少ない部品メーカーが高いシェアを持つことが少なくないだけに、今回の問題は自動車業界に波紋を広げそうだ。
現在配信中の「週刊文春 電子版」では、外資系部品メーカーの強気の交渉の背景、大手トラック会社首脳の反応、独禁法違反との指摘に会社側はどう答えたのか、など今回の値上げ問題の全舞台裏を詳報する。
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