3月9日午後7時ごろ、記者(30代・女性)はある公園の側に立っていた。パンツスーツにトートバッグと飾り気のないファッションだったが、次から次へと男性から声をかけられる。

 そのなかの1人、40代後半くらいだろうか、一見普通のサラリーマン風に見える男性はこう言った。

「お姉さん、今何してるの? お金払うからどこかで遊ばない?」

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 記者が首を振ると、男性はすっと目の前から立ち去った――。

大久保公園の側では男性が女性に声をかける様子が見て取れた ©文藝春秋

公園で売春相手を探す“交縁女子”たち

 記者が立っていたのは新宿区・歌舞伎町にある「大久保公園」周辺だ。実は今、この場所がかつてなく賑わっている。

 公園を囲む四方の道路や、隣接する健康施設「ハイジア」や大久保病院の一帯は、以前から女性が身体を売るスポットとして知られていた。しかしここ数年で“立っている”若年層の女性が増加。なかには歌舞伎町の新宿東宝ビル横でたむろする「トー横キッズ」ら未成年もいるという。
 
 公園で援助交際をする、つまり路上で売買春の契約を結ぶことを意味する隠語「交縁(こうえん)」がTwitterをにぎわせており、〈いま公園にいるんですけど会える方いますか?〉や〈これから都内新宿歌舞伎町にてお会い出来る方dmください!〉などのツイートが散見する。“立ちんぼ”においてもリアルとバーチャルの融合が起き、若い世代にとってより身近になってしまっているようだ。

大久保公園の側に立つ女性たち ©文藝春秋

 こうした状況の中、女性支援団体「Colabo」が歌舞伎町などで行き場のない少女らへの支援活動を行っていたところ、団体が東京都の委託費を不正に受給しているとのツイートが話題になった。東京都の監査でColaboが公金を着服している事実は認められなかったものの、経費報告に不適切な点があり改善を求められた。Twitterではいまだに論争が繰り広げられている。

 Colaboに呼応した形で、迷惑系YouTuberが「少女たちを狙う性暴力や性的搾取を許さない」とのスローガンのもと大久保公園周辺での声かけ運動を行うなど、SNSを中心に公園周辺の立ちんぼ事情に関する情報発信が増加。一帯を歩きながら撮影した動画などが、YouTubeに投稿されるようになった。

 こうして、大久保公園周辺の路上で売春相手を探す立ちんぼの存在が広く知られることになった。いまでは動画撮影者のほか、物珍しさに訪れる人もいて、公園周辺が観光地化している。