恩師の亜大・生田監督からの言葉「お前なら、絶対できる」
恩師の優しさも改めて心に染みた。亜大・生田勉監督に「手術することになりました」と恐る恐る報告すると、「残念だったな。でも、お前なら、絶対できるから」と激励された。日本一厳しいとも言われる亜大野球部で主将を務めた田中にとって、生田監督の存在ほど大きいものはない。「大きな期待をしてくれてた分、何て言われるのか不安でした。怒られるかなって。でも、そうやって励ましてもらって本当にうれしかった。来年ドラゴンズでレギュラーになって活躍して、絶対恩返ししないといけないです」。
亜大の同期で、西武・青山美夏人投手は開幕3戦目で見事にプロ初セーブを挙げた。「みんな頑張ってて、刺激になります。自分のことのようにうれしい。でも次は自分の番ですね」。東海大菅生や亜大の仲間とのLINEグループには「みきや、がんばれ!」と励ましの言葉が次々と届いた。
田中はいつもひょうひょうとしている。かといって、クールを気取っているわけでもない。いつも嫌な顔せず、ニコッと笑って取材に応じてくれる。田中を語る上で、避けられない国指定の難病「潰瘍性大腸炎」の話になっても「前はそればっかり言われて嫌だなぁって思ったときもありましたけど、今はありません。それも含めて僕ですから。あれがあったから、今があると思ってます」と笑い飛ばす。大腸全摘出を経験したが、好きな食べ物はお寿司で、特にマグロとサーモンが大好き。辛いものは食べないが、お酒もたしなむ程度に飲む。嫌いなものはとうもろこし、おくら、きのこ、野菜……と続々挙がる。記者も、思わず「意外と多いんだね」と言ってしまった。
手術から、1週間が経過した。現在は右肩を装具で固定し、少しずつ院内を散歩し始めた。「(大腸)全摘のときに比べたら、先が見えてるので全然気は楽ですよ。なんとか今シーズン中に復帰したい。焦る気持ちを抑えながら、亜大魂見せてやりますよ」。
ドラゴンズの野球を大きく変えると思わせてくれた背番号2。前向きなその声は、生気に満ちている。絶望からどんな逆転劇で、まくってやろうか。そんなギラつきさえ感じる。「災い転じて、福と為す」。全ての困難は乗り越えるためにある。来年は絶対、開幕戦で大暴れできる。
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