娘ふたりを連れて、かつての日常を取り戻したマリンへ
そして、過日。春先だけの貴重な平日デーゲームに、ふたつ返事で「行く!」と言った始業式帰りの娘ふたりを連れて、ぼくらは今季初のZOZOマリンに向かうことになった。
しかも、先発のマウンドには期せずして、“WBC凱旋”佐々木朗希!
ずいぶん前に取っておいたチケットだから、そんなつもりは全然なかったけど、経験上、「現地に行った試合で勝利を味わう」ことが、野球の“推し活”継続にとっては重要なポイントだけに、解禁された声出し応援&朗希の登板試合は、ロッテの魅力がつまったまたとない組み合わせ。
果たして。そんなぼくの期待に応えて、マウンドの朗希は初回から164km/hをマークするなど、6回80球、11奪三振と、もはや別格のピッチング。要所で追加点を挙げたチームは、集中力があまりもたない子どもにもやさしい3時間以内のスピードゲームで、本拠地開幕3連勝を飾ってみせた。
朗希のスゴさや164km/hの途方もなさなんて、たぶんまだ娘たちにはわからないし、そもそも犠牲フライでなぜ点が入るか、ぐらいのところからかなりあやしい。
でも、ロッテファンの誰もが自慢に思う“帰ってきた”あのマリンの最高の雰囲気のなか、勝ち試合を体感してもらえただけでも、「誘った側」としては万々歳。
かねて、荻野貴司びいきを公言してきたぼくとしては、チームの勝利よりも、どうやらまた“妖精”を呼んでしまったらしい彼の負傷交代のほうが気が気でなかったりもしたけれど、一方では、のっけからグズグズだった5年前の浦和(※詳しくは去年のコラムをご参照くださいませ)とは見違えるほどに集中してグラウンドを見つめる娘の成長には感慨もひとしお。
帰り際には、娘たちから「楽しかった」、「また行きたい」という言葉も引き出せて、トータルで見れば、大満足な1日になったのだった。
そんなわけで、お目当ての美馬は出なかったけど、佐々木朗希という押しも押されもせぬスター選手を得たいまこそ、美馬のようなベテランの存在はチームにとって欠かせない、と、今回のコラムでは声を大にして訴えたい。
ちょっと点を取られたぐらいでは動じない。ベンチに下がっても、明るくチームを鼓舞し続ける。すぐどんよりしがちなロッテの若手選手たちには、ウチの娘の心をも動かしたその柔和でやさしい笑顔の裏側にある強さを、ぜひとも感じ、見習ってほしいと、心から思うのだ。
チーム全体が下を向かずに「また明日」とポジティブに切り替えてさえくれれば、たとえ負けが込んでいようと、自然と球場にも足は向く。 そりゃあ、勝ってくれるのがいちばんだけど、子どもにもちゃんと伝わる「いいものを観た」がもっと増えれば、「また行きたい」もきっと増えるに違いない。
娘ふたりはお菓子詰め合わせにまんまと釣られて今年からTEAM26のジュニア会員。上の娘はもう6年生だから、マーくんがデカデカと描かれた入会プレゼントの ベースボールシャツを着るのは、ちょっと恥ずかしそうだけど、きっと誘えば「行く!」と言うだろうし、マリンにもまた遠からず行くだろう。
正直、ハマる、まではまだいっていない。でも、かつての日常を取り戻したマリンでの観戦が、わが家にとっても日常になったあかつきには、その人柄だけでなく、選手としての美馬のよさ、なんかについても父娘で言葉を交わせればと思っている。
“凱旋”朗希グッズ目当てのお客さんで長蛇のレジ待ちが発生していた球場ストアで買ったタオルは、もちろん「15番」(ちなみに、下の娘は「16番」なので種市篤暉)。
美馬っちとミニっちが“共演”した先日放送の『おとうさんといっしょ』も、ひとりで勝手に録画を観ていたし、彼女のランドセルにはすでに「15番」のユニフォーム型クッションキーチェーンが揺れている。
「とにかくイニングを食ってくれる。そこが美馬の素晴らしさよ」
お父さん的にも、いつでもウンチクを語る準備はできている。
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