街中のいたるところに“ラーズ・ヌートバー選手”と書かれた幟が立ち、商店のウィンドウには同選手の顔写真がプリントされたポスターが貼られている。そんな景色が広がるのは埼玉県東松山市。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で活躍したヌートバー選手ゆかりの地だ。

地元商店街はSNSで猛アピール
駅の改札を出るとすぐにヌートバー

「東松山市はヌートバー選手のお母さん、久美子さんの出身地です。久美子さんのお父さんである達治さんは地元の市議会議員も務めた名士。市はWBCの盛り上がりを少しでも町の活性化につなげようと躍起になっています。ただ、盛り上がりの一方でヌートバー選手の肖像権を心配する声が上がったり、転売屋が現れたり、順調とは言えない状況のようです」(東松山市民)

 日本中が燃え上がったWBCの残り火は、妙なくすぶりかたをしていた――。

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ペッパーミル・パフォーマンスも話題 知名度爆上げのヌートバー選手

 ラーズ・ヌートバー選手はアメリカのカリフォルニアの生まれ。現在MLBのカージナルスに所属している。つい2カ月前までの日本人は名前すら知らなかったその選手が、いまやそこらのプロ野球選手をしのぐ有名人になった。

「大谷翔平選手やダルビッシュ有選手といった大スターと違い、大会の前後で最も人気が高騰したのは間違いなくヌートバー選手でしょう。国籍はアメリカながら、母親が日本国籍を持っているため代表に選ばれ、WBC初となる日系人の代表選手になりました。チームへの貢献はもちろん、特に彼の愛嬌のあるしぐさが日本ファンの心をつかみました」(スポーツ紙記者)

©️鈴木七絵/文藝春秋

 特に日本中を席巻したのは、ヒットを打ったあとに見せる胡椒を挽くようなしぐさ。ヌートバーが持ち込んだこのペッパーミル・パフォーマンスは代表チームにあっという間に浸透し、メンバーたちに強い結束をもたらした。優勝の原動力のひとつといっても言い過ぎではないかもしれない。

 だが日本代表とはいえ、ヌートバーは生まれも育ちも海の向こう。本人と日本の縁はそれほど深くない。埼玉県の中部に位置する東松山市。母の久美子さんの出身地であるこの街だけが、ヌートバーと日本をつなぐ唯一重大な絆と言えるかもしれない。