ヌートバーが活躍するほど熱く燃えた“ゆかりの地”東松山
大会日程が進み、代表チームが勝ちを重ねるにつれ、小さな街は一躍その名を全国に広めていった。ヌートバーが活躍すればするほど、東松山の街も熱く燃えた。駅のホームには活躍をたたえるポスターがでかでかと貼りだされている。地元の熱狂ぶりをタクシー運転手は語る。
「うちの社長が久美子さんの小学校の同級生だから、つい最近まで車体のうしろにヌートバーの写真を貼っていたよ。予選でヌートバーが活躍しだしてからにわかに町が活気づいてね。久美子さんの親父さん、達治さんが市議会議員を務めていたからといって、市役所には親父さんの写真を展示してたりしていたね。東松山なんてあまり知られていなかったのに、一気に有名になって観光客も増えたんじゃないかな」
東松山駅から出ると、すぐにWBC優勝を祝う幟が並ぶ通りが見える。街中には、地元高校の書道部が書いたメッセージが掲示されるスペースが設けられ、いたるところに“ヌートバー・フィーバー”の名残が今でも感じられる。
行政も町おこしに乗り出し、市役所にはメッセージのボードも
行政もこれを機に町おこしを、と考えているのだろう。市役所にはメッセージカードを貼り付けたボードが今もなお設置され、庁舎をつなぐ渡り廊下にも侍ジャパンの優勝をたたえるメッセージが掲げられていた。
市内の商店会では「プレゼント用のエコバッグ」を作成
市内の「まるひろ通り商店会」では、ヌートバー選手の活躍にあやかった商品を開発し、購入者には特別なエコバッグをプレゼントするというキャンペーンを行っていた。その様子はスポーツ紙などで取り上げられ、多くのファンがエコバッグ目当てに押し寄せたという。布団屋を営む商店会副会長はその効果をこう語る。
「商店会のみんなでアイディアを出し合ってポスターとかエコバッグを考えました。おかげで多くのファンが訪れてくれました。エコバッグも100個しか作らなかったので、すぐになくなってしまいました。もちろん、ご実家の方にはしっかり仁義をきっています」
流石、栗山英樹監督をして「みんなが好きになる」と言わしめたヌートバー選手。その集客力もホームラン級のようだ。しかし、このお祭り騒ぎはやや過熱する。商店会に名を連ねるある専門店の店主はこう告白する。
「実は、“ヌートバー選手フェア”の達治さんへの報告は事後報告だったんです。当初はこれくらい大丈夫だろうと思って始めたのですが、報道されてから予想以上に盛り上がってしまい、慌ててご親族に説明にうかがいました。ところが見立てが甘かったせいで、今度はネットで炎上してしまって……」