近所の並木道を歩いていると桜吹雪が舞い、もういつの間にこんな季節かとほとんど実感がないままに渦を巻く桜に見惚れる。自分にも入学式や卒業式があったのかと不思議に思う今日この頃。
ぼんやりとスマホの画面を眺めていると、あるウェブニュースが表示された。
「コーンロウで卒業式“隔離”」という題で、ある生徒が卒業式当日にコーンロウと呼ばれるアフリカの伝統的ヘアスタイルである編み込みで登校したところ、学校側が生徒を体育館の2階席に隔離し、名前を呼ばれても返事をしないようにと指示したという内容だった。
生徒はアフリカにルーツを持つ父と日本人の母との間に生まれ、卒業式以前は癖毛である髪を伸ばしてアフロヘアにしていて、度々学校から切るようにと指導されていたという。この事が明るみに出ると、教育委員会は生徒とのコミュニーション不足で起きた事だと説明した、とある。
この件について誰が正しいとか誰が間違っているかなどと言うつもりは毛頭無い。この事は現代日本社会の多様性を受け入れる懐の浅さが露呈したに過ぎず、この学校や教師や或いはこの生徒を裁いてみたところでこの社会の本質や共通概念は少しも変わらないからだ。
しかし、この生徒と同じ黒人のミックスである私は、自身の幼少期から学生時代、ひいては社会に出てからも感じてきた、外国人風の見た目ゆえの日本社会で自然に生きる事の難しさを思い出さずにはいられなかった。
ブラックミックスの筆者が高校時代に体験した事
現在34歳である私がまだその半分の17歳だった高校時代の話である。私もかなりの癖毛で、丁度十代の頃のマイケル・ジャクソンと同じような髪質だった。周りの生徒達のように髪を染めはしなかったが、少し伸ばしアフロヘアにしていた。
普段からいろんな教師に「すごい髪型だな、切ってこい」などと言われる事があったが、自身は納得できなかったので相手にしなかった。
ある日の授業中、ある教科の担当教員が何を思ったのか突然私を指差し、「ほらすごい髪型のやつがいるぞ」と言った。