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「辞めろ」「辞めない」の応酬で泥沼に…高市早苗の「放送法文書」騒動で、見落とされている“問題の本質”

「辞めろ」「辞めない」の応酬で泥沼に…高市早苗の「放送法文書」騒動で、見落とされている“問題の本質”

2023/04/04
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 そして、

《この変更が礒崎氏らの執拗な働きかけによって、しかも密室でなされた経緯が暴露された。このプロセス自体が異常だ。》(金平茂紀氏・同上)

 注目すべきはそこであり、権力とメディアについて再論議・検証されるべきだったのだ。

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「けしからん番組は取り締まっていい」という共通認識

 ところで、高市氏が礒崎氏の影響を受けずに自分の考えだけで答弁したなら問題はなかったのだろうか。それは逆だ。当時の安倍政権のメンバーはテレビ局に対して“けしからん番組は取り締まっていい”という考えが自然に共通していたことになるからだ。ますますヤバかったことになる。放送法の「不偏不党」は「どっちつかず」ではなく「権力からの自由」のこと。かつて政府の検閲の結果、メディアが軍と一体化して戦争に突き進んだから反省がある。だから今回は政府による干渉やけん制について再検証されるべきだった。

©JMPA

 元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、

《当時の高市総務相の「停波」答弁以降、特定のテレビ局だけでなく全テレビ局が何をするにも警戒し、かつてより踏み込まなくなっており、悪平等のようなことが出てきてしまっています》

 と証言している(朝日新聞3月17日)。

当時の新聞報道をふりかえると…

 あらためて高市氏の答弁は、当時はどう報じられていたのだろう。まず「政治的公平について一つの番組だけを見て判断する場合があると答弁」(2015年5月12日)について。翌日の紙面を調べてみると朝日も毎日も読売もこの答弁を報じていなかった。あれ?

 実はこの当時は3日後にこんな大きなニュースがあったのだ。

『政権、安保政策を大転換 法案閣議決定 国会審議へ』(朝日新聞2015年5月15日)
『安保政策歴史的転換 関連法案を閣議決定 集団的自衛権容認』(毎日新聞・同)
『日米同盟の抑止力強化 安保法案閣議決定 集団的自衛権を限定容認』(読売新聞・同)