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「辞めろ」「辞めない」の応酬で泥沼に…高市早苗の「放送法文書」騒動で、見落とされている“問題の本質”

「辞めろ」「辞めない」の応酬で泥沼に…高市早苗の「放送法文書」騒動で、見落とされている“問題の本質”

2023/04/04
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「政治的公平について一つの番組だけを見て判断する場合があると答弁」(2015年5月12日)
「政治的公平を欠く放送を繰り返せば電波停止を命じる可能性に言及」(2016年2月8日)

 すると「電波停止」発言から4日後の2月12日、政府は「政治的公平の解釈について」という政府統一見解を公表した。これは大きな出来事だ。では当時はどう報じられていたのか。各紙の「新聞縮刷版2016年2月分」で調べてみた。

『「政治的公平」政府が見解 電波停止発言「番組全体を見て判断」』(読売新聞2016年2月13日)
『「番組見て全体を判断」電波停止発言 公平性統一見解』(朝日新聞2016年2月13日)

高市氏の国会答弁からの「強烈な流れ」

 それまでは政治的公平に関して「一つの番組ではなく、放送局の番組全体を見て判断する」としていたが、新しい政府見解では「一つの番組を見て全体を判断することは当然」と高市答弁を踏襲している。この流れは強烈だ。

 つまり今回の行政文書の大事な論点は、高市氏について「辞めろ辞めない」の応酬ではなく、

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《本質は、放送法を巡る政府解釈が、16年の高市総務相の国会答弁によって実質的に変更されたことの経緯が明らかになったことだ。》(信濃毎日新聞3月23日、ジャーナリスト金平茂紀氏のコラム)

 言ってみれば官邸で暴れていたモグラの正体が見えたわけで、それが礒崎陽輔首相補佐官(当時)だった。礒崎氏は、第2次安倍内閣で首相補佐官を務め、放送法が定める政治的公平性の解釈について総務省に働きかけていた。その際、官僚に厳しい口調で詰め寄ったことも今回の行政文書によって明らかになった。