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「航空学校編」のラブコメ風味に傾きすぎたシーン作りにも、違和感を覚えた。舞は同じ訓練チームの柏木(目黒蓮[Snow Man])と恋に落ちるが、「キュン」や「映え」という、その場限りの「結果の説明」に重きを置いて、2人がなぜ惹かれあったのかという「心の過程」が見えてこなかった。

「同じチームで同じ夢を持つ同志でありながら、惹かれあう」という、舞と柏木だからこその関係性をもう少し丁寧に描いてほしかったと願うのは、「うるさい視聴者」のわがままだろうか。

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オリジナルストーリーの「ペース配分」の難しさ

 物語の後半は「IWAKURA再建編」「こんねくと起業編」「空飛ぶクルマ編」と続くが、やはり週によって描写の濃淡にばらつきがあったり、たまに登場人物が「キャラ変」や「記号化」したように見えてしまうことがあった。

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 歌人として重篤なスランプに陥ってしまった貴司の異変に、あの舞が1年以上気づかないのも不自然だったし、「こんねくと起業編」「空飛ぶクルマ編」に至っては、終盤にあわただしく畳み掛けた感が否めなかった。もちろん、半年間という長い物語、それもオリジナル作品の、ペース配分の難しさは理解するのだが……。

「うるさい視聴者」として欲を言わせてもらえば、もう少し「こんねくと」や「空飛ぶクルマ」が成り立っていく過程を「人力飛行機編」のように細かく見せてほしかった。後半のキーパーソンのひとりである御園(山口紗弥加)の立体的なバックボーンも感じさせてほしかった。7週までの物語を見るに、限られた時間の中でもそれらを描写することは可能だったはずだ。

「朝ドラを愛する者」として感じた悔しさ

 こうした終盤の描写不足からミスリードが生じ、前述したような「不満の声」を増やすに至ったのではないだろうか。作り手と受け手の齟齬により、ドラマ全体が伝えたいメッセージが、一部の視聴者には十二分に届かなかった側面もある気がして、ひとりの「朝ドラを愛する者」としても悔しい思いがある。

 もちろんドラマはチームワークによる「総合芸術」なので、特定の誰かを責める意図はないことをご理解いただきたい。モデルのいない「現代もの」でオリジナルストーリー。それだけでもハードルが高いのに、ものづくりの東大阪、五島列島の自然、人力飛行機、航空学校、町工場、「空飛ぶクルマ」、短歌……と、これだけ沢山のピースを有機的につないでひとつの物語を完成させた奮励には拍手を送りたい。