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朝ドラ史に残る挑戦作『舞いあがれ!』に見た「賛否の分かれ目」 ヒロインの“キャラ変”、後半の展開に疑問の声も

朝ドラ史に残る挑戦作『舞いあがれ!』に見た「賛否の分かれ目」 ヒロインの“キャラ変”、後半の展開に疑問の声も

2023/04/05
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 朝ドラ視聴者の「うるささ」を、2010年代以降の、Twitterという即時に感想をつぶやけるツールの浸透が助長していることは間違いない。そんななか今回、『舞いあがれ!』の感想で非常によく見かけたのが「複数脚本家の連携がうまくいっていない」というもの。

 これに関しては、ドラマを好意的に見ていたファンも、懐疑的・批判的な視聴者も、双方につぶやく人が多かったのが興味深い。本作は全話26週中、メインの脚本家・桑原亮子氏が19週分、サブ脚本家の佃良太氏が5週分、同じくサブ脚本家の嶋田うれ葉氏が2週分を担当している。

高畑淳子は、主人公・舞の祖母を演じた ©文藝春秋

 筆者は朝ドラの脚本を単独で担った脚本家に何人もインタビューしてきたが、皆、異口同音に、書き終えた直後は「燃え尽き症候群」だったと語っていた。放送期間半年、撮影11カ月、準備期間も入れると制作におよそ2年。朝ドラの制作・脚本は相当にタフだ。

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 そのうえに本作は、人力飛行機、航空大学校、町工場、「空飛ぶクルマ」と、各専門分野への綿密な取材が欠かせないストーリー。昨今の「働き方改革」の時流もあり、脚本の「分業」はやむなし、といったところだろう。

第1〜7週、桑原脚本の持ち味は「繊細な言葉紡ぎと心情描写」

 メイン脚本家の桑原氏が書く、「言葉」という名の膨大な砂山の中から砂金を選り出して、それをさらに精錬したかのような、吟味された台詞。また一方では、台詞に頼りすぎず、言葉にならない、名前のつかない感情を繊細に、しかし克明に刻みつける作劇。こうしたものが『舞いあがれ!』の特性であった。

 桑原氏が担当した序盤の第1〜7週は、言うなれば物語の「地盤固め」。第1〜3週の「少女編」では、他者、とりわけ母のめぐみ(永作博美)の気持ちを慮り、共鳴しすぎて熱を出しやすい子どもだった舞が、祖母・祥子との五島での暮らしを通じて自立心と自信を身につける。祥子のような「強い人になりたい」という舞の願い、そして「空へのあこがれ」という原体験が鮮やかに描かれた。