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 また本作は、非常に今日的で、未来を見据えた朝ドラだとも感じている。すべての「編」において舞は「女のくせに」とか「女だから」と言われたことがない。舞が望む進路について、父の浩太(高橋克典)や母のめぐみが「女の子だから」という理由で反対したことは一度もなかった。舞はいつでも自らの意思で選択して努力し、やりたいことを能動的に実現させてきた。

舞が「オタサーの姫」のように扱われない好ましさ

「なにわバードマン」の中で、舞が「オタサーの姫」のように扱われることなど決してなく、最初から最後まで「仲間」として、「ひとりの優秀な戦力」として扱われたのも好ましかった。佐伯(トラウデン都仁)が玉本(細川岳)にピシャリと言った「何ですぐくっつけようとするんですか。人の恋愛で潤わんといてください」という台詞に「このドラマは信頼できる」と強く思わされたものだ。

舞の母・めぐみを演じた永作博美 ©文藝春秋

 やがて夫婦になる2人、理系でメカオタクの舞と、文学青年から歌人になった貴司という、既存のステレオタイプを反転させるキャラクターも新鮮だった。また当然、貴司が「男たるもの」を強要されることもなかった。「家事も子育ても、その時できるほうがやる」という夫婦のあり方も、特別視されることなくごく自然に、当たり前のように描かれていた。 

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 舞と貴司の一人娘で、宇宙人とUFOが大好きな歩(浅田芭路)は、かつて舞が祥子の背中を見て感じたように、母である舞の背中を見て、自分も空(宇宙)にあこがれる。パイロットを目指してもいい。宇宙飛行士を目指したっていい。歩に約束された「自由な未来」が、この先に続いている。

『連続テレビ小説 舞いあがれ! 完全版 ブルーレイ BOX1』

『舞いあがれ!』は確かに挑戦的な作品だった

 最終話は今から少し先の未来の2027年。舞と「アビキル」の仲間たちは、空飛ぶクルマ「かささぎ」を開発し、就航までこぎつけた。まだこの世にないものにパイオニアが挑む時、「あり得ない」「おかしい」「そんなもの必要なの?」と、色眼鏡をかけた人は言う。しかし、ニーズがあってから作るのではなく、ニーズを先読みし、ニーズを創り出すのが先駆者というものだ。20年前に「そんなもの必要なの?」と言われていたAIやスマホは、今や我々の日常に溶け込み、生活に欠かせないものとなっている。

「かささぎ」を作り出した舞たちと同じように、『舞いあがれ!』というドラマも、「エポックメイカー」なのかもしれない。だからこそ、見る者の「物差し」を浮き彫りにさせる作品でもあった。本作が、朝ドラ史に残る、挑戦的なドラマであることは確かだ。