「事故を起こしたことは間違いないが、眠気を催した覚えも、前方注視困難になった覚えもないので否認する」
昨年9月21日午後1時30分頃、国道163号線の京都府笠置町付近で、大阪府の岩瀬徹郎被告(当時41)が運転するトラックが、山本隆雄さん(65)と妻の倫代さん(65)の乗る軽自動車に正面衝突した事故。第3回公判が3月8日に開かれ、過失運転致死傷の罪に問われている岩瀬被告は、こう述べて“居眠り運転”を改めて否定した。
また、岩瀬被告の弁護人は「記憶に従って認否している。謝罪文も送り、損保会社を通して賠償も行う」として“執行猶予”を求めた。そして、被告弁護人の口からは、にわかには信じがたい主張が飛び出したのだった――。(#1を読む)
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意識不明だった母親の意識が回復したことを材料に減刑を主張
法廷でその様子を見つめていた山本さんの長女・星野亜季さんが力なく肩を落とす。
「裁判が始まる前に、被告は“居眠り運転”していたと供述していて、長時間にわたってトラックが蛇行運転している映像もあると聞いていたので、裁判では過ちを認め、私たち遺族に心からの謝罪があると思っていました。しかし被告は、初公判から一貫して、“居眠り運転”を否認しています。
しかも、亡くなった父や、今でも入院中の母に対して、私たちが納得できる謝罪はありません。被告弁護人が送ったと述べている手紙ですが、『記憶にないので否認する』と主張している被告の謝罪文を読むことなど心情的にできないので、私たちの代理人に預かってもらっています。
代理人によれば、宛名は被害者参加人の私と弟だったそうです。裁判に参加している私たちに向けた、形式的な裁判対策としか思えませんでした。しかも、手紙が届いたのは保釈されて3カ月も経った、第2回公判の直前です。『記憶にないから否認する』と言っているわけですから、謝罪文はあくまでも減刑を狙っているとしか感じられません。
さらに、被告弁護人は、脳挫傷などの重体で一時は意識不明だった母の意識が回復したことを理由に“被告人有利”、つまり減刑の材料になると主張したんです。母の容態を利用して罪を軽くしようとするなんて、どれだけ私たち遺族を侮辱すれば気が済むのでしょうか」